第50回番外編!島々の名の由来とハワイ神話
ハワイの歴史・文化に詳しいライター・森出じゅんさんのコラム。記念すべき第50回は、ハワイの基礎の基礎にあたる島々の名前についてお届けします。
更新日:2026.04.30
「ハワイ諸島」VS
「サンドイッチ諸島」ALOHA! ホノルル在住の森出じゅんです。
ハワイ文化に焦点を当て、ちょっと意外なハワイの横顔を紹介するこのコラム。いよいよ記念すべき第50回目を迎えました! 長年のご愛読に、深~く感謝しております! ふだんは史跡や神話の舞台など「場所」を切り口にお届けしていますが、今回は特別編といいますか番外編の第4弾。ハワイの基礎の基礎にあたる島々の名前について考えていきましょう。
今は昔…。ハワイの美しい島々が、サンドイッチ諸島と呼ばれたことがありました。名付け親はイギリスの航海家、ジェームズ・クック船長。1778年、ハワイに初めて到来した際、航海の支援者だった自国のサンドイッチ伯爵の名をとって命名しました。
欧米人として初めてハワイに上陸したクック船長。Photo Courtesy of Hawaii State Archives確かに西洋の地図にハワイを初めて記したのはクック船長ですが、何もその時、ハワイが無人島だったわけではありません。当然、島々の名称はあったわけで、外国人探検家によって勝手にサンドイッチ諸島と命名されても困りますよね。
その名称が欧米で使われた時代もありましたが、カメハメハ3世時代以降、徐々に消えていくことになりました。きっかけの一つとなったのが、3世時代に発布されたハワイ初の憲法(1840年)。その中で「ハワイ王国」との名称が、繰り返し使われたからです。エベレスト山(現地での名はチョモランマ)のように恒久的に世界で定着しなかったのは、ハワイにとって幸いでした。

イギリスで1838年に作られた地図。まだサンドイッチ諸島の名が残っている。Photo Courtesy of Hawaii State Archives
神話・伝説に見る
島々の名の由来さて本題。ハワイが「ハワイ」と命名されたのは、言うまでもなく悠久の昔です。ここで「なぜハワイなのか?」と聞かれてしまえば、その答えは明白ではありません(詳しくは後述)。ですが神話的視点から考察することはできます。以下、伝説上の航海士、ハワイロアの物語で語られている島々の名の由来を見ていきましょう(注:史実ではなく一つの神話としてお楽しみください)。
太平洋の島々のほとんどが無人島だった、大昔。ハワイロアと兄2人が、南方から太平洋を北上してきました。兄は途中で見つけたタヒチとマルケサス諸島に降り立ち、それぞれ島の首長となりました。ハワイロアだけはそのまま旅を続け、ハワイの島々を発見しました。

ロイヤルハワイアンホテルに展示されている1927年作成の地図
当時ハワイには、2つの島しかなかったとか。ハワイロアは最初に見つけた島に自分の名からハワイ島と名づけ、2つめの島には長男の名をとってマウイ島と名づけました。その後、ハワイ島とマウイ島の火山活動によって多くの島々が海底から出現。そこでハワイロアはある島を娘の名からオアフ島、もう一つの島を次男の名からカウアイ島と名づけたとか。そのほかの島々には、一緒に旅していた家来の名がつけられたということです。
なお「マウイ島の名は半神マウイからつけられたのではないのか?」という疑問を抱く人も、多いでしょう。答えはイエス&ノー。ハワイロアの伝説では長男の名から命名されたことになっていますが、そもそも長男の名が半神マウイにあやかってつけられたという説も存在するからです。
マウイ島カフルイ空港にある半神マウイの銅像またハワイという名については、有名なハワイキ伝説も関わってきます。これはハワイではなくむしろほかのポリネシアの島々に色濃い信条で、どこか遠くにハワイキという始祖の地がある…というもの。ハワイキが、死者の魂が帰っていく場所と考えられる場合もあります。ハワイキの名は島によって微妙に変わり、たとえばニュージーランドやマルケサスではハヴァイキ、タヒチではハヴァイイ。クック諸島ではアヴァイキ、サモアではサヴァイイとなります。
とはいえ、それがハワイ諸島を指しているわけでもありません。ハワイにはハワイキ伝説自体がないのです。ポリネシアの島々に人が移り住んだ経路や順番を考えても(ハワイにはマルケサスとタヒチから人々が移ってきました)、ハワイがポリネシアの始祖の地だと考えるには矛盾があります。ハワイの名が伝説上の「ハワイキ」からとられた可能性はありますが、真相は藪の中、といえるでしょう。
ハワイの島々の名の
意味合いは?最後に島名の意味合いなのですが…。日頃、「ハワイとかオアフ、カウアイはどういう意味?」と聞かれることがよくありますが、その答えはズバリ、「わかっていない」なんです。ハワイ語辞典を記したハワイ文化の権威、メリー・カヴェナ・プクイさんは別に地名辞典「Place Names of Hawaii」も出版しており、その中で「重要な地名のいくつかはあまりに古い地名のため、意味合いを見出すのは不可能。島々の名前もそれに含まれる」としています。

ハワイ好きなら必読! 名著「Place Names of Hawaii」
さらにプクイさんが言うのは、19世紀以降、いくつかの本で島々の名の意味が推察されてきたが、それらはハワイ語スペルの誤訳や勘違いなどによる解釈で信憑性がないとしています。たとえば「オアフ=人々の集まる場所」という、よく聞く解釈についてもしかり。ハワイ語で重要な2種の発音記号を無視して意味を当てたものだ、とプクイさんは切り捨てています。
一方、プクイさんが地名辞典中、ハワイ主要八島中で唯一意味を載せているのがラナイ島。「征服の日」との意味合いだそうです。その由来として一般に語られるのが、マウイ島首長の息子、カウルラアウの伝説です。
カウルラアウはいたずら好きの少年でしたが、あまりにいたずらが過ぎたため、父親が激怒。カウルラアウをマウイ島沖に浮かぶ小さな島に追放してしまいました。当時、その島は悪霊に支配され、人間は誰も近づこうとしなかったとか。ですが機転のきくカウルラアウは悪霊たちをまんまと騙して退治。島を人間の手に取り戻すことに成功し、父親の許しを得てマウイ島に帰還することができたそうです。それ以来、その島は「ラナイ=征服の日」と呼ばれるようになったということです。

ダニエル・K・イノウエ国際空港の展示より
以上、ハワイの島々の名について、神話・伝説の観点から考察してみましたが、いかがでしょうか? こうしてみると、ハワイ語って本当に奥が深いですね。地名にまつわる神話・伝説が、なんと多いことか。地名にまつわる神話、またの機会に改めてまとめたいと思います。第2弾をお楽しみに!
さて、最後に1つお知らせです。5月12日発売の新刊、「植物でめぐるハワイの神話―楽園の草花と木々に宿る45のおはなし」(イカロス出版)の表紙画像が公開になりました! すでにアマゾンなどで予約注文が始まっていますので、どうぞお手に取ってみてくださいね。

「ハワイカルチャーさんぽ」は2024年に発売。「やさしくひも解くハワイ神話」は現在4刷目、「Hawaii 神秘の物語と楽園の絶景」は2刷目が売り切れ間近となっています。

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Hawaii 神秘の物語と楽園の絶景
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やさしくひも解くハワイ神話
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森出じゅん/JUN MORIDE プロフィール
- オアフ島ホノルル在住。横浜出身。青山学院大学法学部卒業後、新聞・雑誌・広告のライターとして活動。1990年、ハワイ移住。フリーランスのジャーナリストとして活動するかたわら、ハワイの文化や歴史、神話・伝説、民間伝承を研究中。単に「美しいハワイ」にとどまらないハワイの奥深い魅力、真の姿を日本に発信すべく、執筆を続ける。2012年からハワイ州観光局の文化啓蒙プログラム「アロハプログラム」講師。著書に「ミステリアスハワイ」(ソニーマガジンズ刊)、「ハワイの不思議なお話」(文踊社刊)、「やさしくひも解くハワイ神話」(フィルムアート社)、「Hawaii 神秘の物語と楽園の絶景ーハワイの人々が愛する100の神話」(パイインターナショナル刊)がある。
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