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悲劇の女王、リリウオカラニの銅像

悲劇の女王、リリウオカラニの銅像

ハワイの歴史・文化に詳しいライター・森出じゅんさんのコラム第10回の舞台はオアフ島。イオラニ宮殿に背を向けて建つ女王像にまつわるお話です

公開日:2019.04.17

森出じゅんのハワイ歴史&神話散歩

イオラニ宮殿に背を向けて建つ
ハワイ王国最後の女王の似姿

ALOHA! ホノルル在住の森出じゅんです。

ハワイ文化に焦点を当て、ちょっと意外なハワイの横顔を紹介するこのコラム。のんびり連載を続けるうち、早くも今回で10回めを迎えました! 記念すべき10回めのテーマは、私の敬愛するハワイ王国最後の女王、リリウオカラニの似姿。ホノルル・ダウンタウンに建つ、リリウオカラニ女王像についてお話ししましょう。

まずはリリウオカラニ女王の基礎知識から…。リリウオカラニはハワイ王国8代めにして、最後の女王。王座に着いて2年後の1893年、親米派の白人勢力によって王国が倒され、退位したことから、悲劇の女王とも称されています。

私は週に一度、王国時代の宮殿であるイオラニ宮殿(ホノルル・ダウンタウン)でボランティアをしていまして…。リリウオカラニ女王に関しては話したいことが山ほどあるのですが、今回は特にその銅像に焦点を当ててご紹介したいのです。

というのも先日、女王像の前で、とても心打たれる光景を目にしました…。ある早朝、一人のハワイアン男性が銅像の前でひれ伏し、祈りを捧げていたのです(最初は泣いているのかと思いました)。実際、銅像前ではたびたび、リリウオカラニ女王に捧げる儀式が行われています。女王は今だハワイで崇拝され、その銅像は、人々の敬愛の対象なのですね。

リリウオカラニ女王の
崇高な精神を象徴

女王像は「リリウオカラニの精神」と名づけられ、細部に女王の生涯やその気高い精神を象徴する事象がデザインされています。たとえば、首にかけているのはレイ・ニホ・パラオア。人の毛髪とクジラの歯でできたネックレスで、古代ハワイでは王族だけが身に着けることができました。王族の象徴ですね。

そして左手には、女王の生涯で大変重要な意味を持つ3つの書類が。1つめは、皆さんにもお馴染みの女王作の名曲、「アロハ・オエ」の楽譜。2つめは、ハワイの創世記「クムリポ」の原稿です。クムリポはそもそもハワイの王族の聖なる血統を伝える2000行以上の叙事詩として、王家に伝わってきたもの。

創られたのは1700年前後とされていますが、19世紀終盤、ハワイ王国7代目のカラカウア王の命で(詠唱から)ハワイ語に書き起こされ、カラカウア王の妹のリリウオカラニ女王により、英語に翻訳されています。

最後は、リリウオカラニ女王が1893年に成立を目論んだ新憲法の草案。そしてこの新憲法こそがハワイ王国崩壊の引き金となった、いわくあるものなのです。ちょっと難しい話になりますが、王国が倒れた背景を説明しましょう。

1887年、白人勢力が武力の脅しによってカラカウア王に押しつけた、後に銃剣憲法と呼ばれる憲法が成立しました。それは王権をないがしろにする、君主にとってひどく屈辱的な憲法。それを是正しようと、リリウオカラニ女王が新憲法の成立を目ざしたところ、白人勢力が猛反発! 結果的にハワイ王国が転覆されたという経緯があります(ずいぶんはしょって説明しています)。

こうした細部を知ったうえで見ていただくと、女王像がただの銅像ではなく、全く違ったものとして見えてくると思うのですが、いかがでしょうか?

今もハワイアンが集う
リリウオカラニ女王像

くだんのリリウオカラニ女王像が佇むのは、イオラニ宮殿とハワイ州政庁の間。宮殿に背を向け、州政庁に向かう形で建っています。その前にひれ伏す男性に遭遇したのは、とある日曜の朝のことでした。週日はホノルルの行政区&経済区として賑わうダウンタウンも、週末は静まり返っています。男性は近くに荷物を置き、靴も脱いで、固いコンクリートの上に裸足で正座しずいぶん長い間祈っていました。

その光景を少し離れて見守っていると、やがて男性は起き上がり、今度は女王像に向かってハワイ語のオリ(詠唱)を捧げ始めました。彼はハワイ語の完璧な使い手であるらしく、それは朗々として美しく、しかも感情がこもっていました。詠唱というより、まるで女王に向かって語りかけているかのよう…。

ハワイ王国が崩壊した1月17日にも、毎年ここで儀式が催される

恥ずかしながら、ハワイ語が不得手な私にオリの内容はわかりませんでしたが、彼がリリウオカラニ女王を深く敬慕していることだけは、ひしひしと感じられました。神聖なオリによって、周囲の空気が清められたような印象すら受けたのです。

1893年に王座を降り、1917年に死去しているリリウオカラニ女王。ですが今なお女王の誕生日(9月)や、ハワイ王国の崩壊した日(1月)など年に数回、ハワイアン団体が女王像前に集結し、祈りやフラを捧げる機会があります。そんな時の女王像は決まって、魂がともっているかのように生き生きとして見えるから不思議!銅像というより、まるで女王がこの世に蘇ったかのようです。

2017年11月11日には、銅像前でリリウオカラニ女王の没後100周年式典が開かれた

そんな儀式に出席するたび、私は実感するのです。ハワイはアメリカの一部になりましたが、今も昔も、人々の亡きハワイ王国や王族への敬慕の情は変わらない。特に最後の女王、リリウオカラニは今なお人々の心の中に生き続け、慕われているのですよね。

みなさんもダウンタウン散策の際はぜひこのリリウオカラニ女王の似姿を訪ね、女王の人生に想いを馳せてみてください。

さて、ここで一つお知らせです! まだ先の話ではありますが、今年、日本でリリウオカラニ女王の生涯を学ぶセミナーを計画しています。この件、また改めてお知らせしますね。どうぞお楽しみに~。


 

森出じゅんさんの著書「ハワイの不思議なお話〜ミステリアスハワイ」。

歴史や神話、伝承、スピリチュアルな世界まで、ハワイの知られざる一面を、独自の調査・研究に基づき、じゅんさんならではの視点で紹介した一冊です。読めば、ハワイに描くイメージが変わるかも? ディープなハワイを知りたい方は、必読ですよ〜!

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森出じゅん/JUN MORIDE プロフィール

オアフ島ホノルル在住。横浜出身。青山学院大学法学部卒業後、新聞・雑誌・広告のライターとして活動。1990年、ハワイ移住。フリーランスのジャーナリストとして活動するかたわら、ハワイの文化や歴史、神話・伝説、民間伝承を研究中。単に「美しいハワイ」にとどまらないハワイの奥深い魅力、真の姿を日本に発信すべく、執筆を続ける。2012年からハワイ州観光局の文化啓蒙プログラム「アロハプログラム」講師。著書に「ミステリアスハワイ」(ソニーマガジンズ刊)、「ハワイの不思議なお話」(文踊社刊)がある。

☆ブログ「森出じゅんのハワイ生活」>>

☆ハワイ州観光局アロハプログラム>>

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