サーシャ✕リーム氏が対談!奥深いハワイアートの世界

サーシャ✕リーム氏が対談!奥深いハワイアートの世界

「ハワイに恋して!」でお馴染み、サーシャの対談コラムがスタート!初回ゲストは、ホノルル美術館やシャングリラ邸に展示作品を持つアーティスト、リーム・バスースさん。

公開日:2019.11.06

ロコガール サーシャがお届け! Aloha対談コラム

アロハ! サーシャです。

今月からアロハストリートで連載コラムをスタートすることになりました!

アロハストリートのカバーモデルをしたり、BS12 トゥエルビで放送中の「ハワイに恋して!」にレポーターとして出演したりと、ハワイを中心にタレント業を行っている私ですが、じつはタレント業をスタートするきっかけは、

自分がハワイと日本の架け橋になって日本の方々にハワイの魅力を伝えると同時に、ローカルの方たちのサポートができるなら素敵だな……

と思うようになったからなんです。

この度うれしいご縁で、そんな私の想いをアロハストリートの連載コラムを通してみなさんにお届けできることになりました。このコラムでは、地元ハワイで活躍するアーティストやスモールビジネスを営んでいる方々にお話を伺い、よりディープなハワイの魅力をお伝えできればと思っています。どうぞよろしくお願いします!

 


 

第一回めとなる今回は、ホノルル美術館やシャングリラ美術館の壁画などを手がけるアーティストのリーム・バスースさん(写真左)にインタビュー。私がリーワード・コミュニティ・カレッジ(LCC)でアートを専攻していたときの恩師でもある彼女に、ハワイでのアート活動や作品作りにかける想いについて伺いました。

リーム・バスース/ Reem Bassous

リーム・バスース/ Reem Bassous

レバノン・ベイルート出身。レバノンの紛争により、幼少期はギリシャのアテネで過ごす。21歳の時、ワシントンD.C.のジョージ・ワシントン大学で、絵画とドローイングの修士号を取得。2006年にハワイに移住し、2007年よりハワイ大学でパートタイム講師として9年間努める。その後、リーワード・コミュニティ・カレッジ(LCC)の講師を務める傍らホノルル美術館やシャングリラ美術館の壁画などを手がける。

リームさんの公式サイトはこちら>>>

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サーシャ:リーム先生、お久しぶりです! 最後にお会いしたのはいつでしたっけ…?

リーム:今年の春だったんじゃないかな。

サーシャ:今年!? 去年だと思ってました(笑)。最近は頻繁に会えなくなりましたが、私が学生だった頃は毎日リーム先生のオフィスに入り浸って絵を描いてましたよね。

リーム:そうね。サーシャはいつもお腹を空かせていて、常に何か食べ物を与えていた気がする(笑)。

 

サーシャ:ははは、いつも誰かのご飯を食べたりコーヒーを飲んだりしてましたね(笑)。毎日勉強や作品作りで疲れ切っている私に、コーヒーを淹れてくれたり、お菓子をくれたり、話を聞いてくれたりとリーム先生には本当にお世話になりました。

あ〜、楽しかったなぁ…学生時代に戻りたい!

リーム:本当に楽しかったよね。当時と比べると、オフィスがとてもキレイになったので、ぜひまた遊びに来て。

 

アートを生み出す上で大切なのは「心を開いて情報の源を探すこと」。

サーシャ:今日はカカアコにある先生のアトリエに初めてお邪魔しましたが、本当に素敵な場所ですね。この作品(2人の後ろにある作品)もとってもユニーク。

リーム:ありがとう。これは、「The Carnival was Over(カーニバルの終わり)」というタイトルの作品で、私が数年かけて取り組んでいるシリーズのうちの一つなの。

真ん中にあるのが、ベイルートの観覧車です。観覧車はずっしりと地についているけれど、カーニバル自体はどこかフワフワとしている…そんなギャップをイメージして描きました。

■The Carnival was Over(カーニバルの終わり)
※制作途中

 

サーシャ:面白いなぁ…。こういったリーム先生のアートは何にインスパイアされているんですか?

リーム:スタジオにいなくてもアイディアが浮かんだ時には、すぐにスケッチできるように常にスケッチブックを持ち歩いているの。アート作品を生み出す上で、「常に用意ができていること、心を開いて情報の源を探すこと」が大切だと思う。人生のすべての側面が私のアートに繋がっているからね。あとは、美術館にもよく訪れるわ。

サーシャ:私も美術館に行くのが大好きです! ホノルル美術館にもよく訪れるのですが、同じ作品でも、見れば見るほど違って見えるから不思議…。

リーム:そうなの。今まさに同じことを言おうとしてた! その時の心境や、作品への問いかけで同じに見えることってないの。何度も見ている作品でも、またその作品の前に立ってみると、衝撃を受けることが多くて。それってアートのパワー、アートからの素敵なギフトだと思ってる。

 

ホノルル美術館に自分の作品を展示できたのは「運」だと思う。

サーシャ:ホノルル美術館といえば、リーム先生の作品も展示されていますよね。

リーム:はい。2015年にホノルル美術館で開催されたアジアン・アートの展示会で展示した作品を翌年の2016年にホノルル美術館が購入してくれて。

サーシャ:ホノルル美術館に訪れると、リーム先生の作品をじーっと眺めていることが多いんです。ホノルル美術館に作品を展示するきっかけは何だったんですか?

リーム:正直、運が良かったんだと思う。展示会が開催される8カ月前に、別のアーティスト作品の出展がキャンセルになってしまって…その空いたスペースに私の作品を展示しないかって声をかけてもらったのがきっかけ。美術館関係者がアジアに繋がりがあるアーティストを探していた矢先、たまたまキュレーター(館長または美術館職員)で私の絵をよく知っている人がいて声をかけてもらったの。

■ホノルル美術館でリーム先生の作品を眺めるサーシャ

サーシャ:うわぁ…すごいラッキーですね!

リーム:通常、美術館での展示会は2〜3年前に決まるので十分な制作期間があるんだけど、この時は展示会までの8カ月間で新しい作品を一から仕上げないといけなかったの。

しかも、その時進んでいた別のプロジェクトもあって…。制作途中の2つの作品と、まっさらな状態から始めた9つの作品を仕上げました。


サーシャ:
え〜! あんな大きいサイズの作品を8カ月で完成させたんですか? しかも同じタイミングで計11点の作品を仕上げるなんて、本当にすごい…。

リーム:厳しい評価が下る美術館の展覧会に出展する作品を11点もこの短期間で仕上げたのは人生で一番大きなチャレンジだったと思うわ。この展覧会のために頑張ったこと、簡単ではなかったことをしっかりと示したいなと。

何時間も作品を作り続けるのは体力的にも辛かったけど、やり遂げることができたし、すべてが終わった後はなんでもできると感じたの。

サーシャ:ホノルル美術館がその中で一番大きな作品を購入し、現在でもハワイのセクションに展示されているんですよね。その作品について詳しく伺えますか?

リーム:「Memory for Forgetfulness(物忘れの記憶)」という作品で、題名はパレスチナの詩人が戦中の経験を綴った詩集からとったの。私は幼少期、レバノンの内戦を生きのびた者として、それを一枚の作品にしたかったんです。

■Memory for Forgetfulness(物忘れの記憶)

リーム:詩集の中で詩人が「自分のために朝のコーヒーをいつか淹れられますように」と祈っているんだけど、作品の中にあるコーヒーカップはそんな詩人の想いを表現したの。

自分のためにコーヒーを淹れるという単純な行為が、戦中はどんなに貴重なことだったか…。このカップはレバノンのどこにもあるレバノンのアイコンのようなもの。

椅子も描き、レバノンの詩人を朝のコーヒータイムに招待するという意味を込めてこの絵を描きました。「やっと自分のために朝のコーヒーを淹れることが叶いましたね」と…。

■作品のモチーフとなった、レバノンのコーヒーカップ

サーシャ:なるほど…作品の背景を知るとまた新鮮ですね。リーム先生が作品を制作する上で、ハワイから影響を受けていることは何かありますか?

リーム:ハワイとパレスチナの歴史には共通の苦しみがあると思う。たとえば、自分たちの土地を奪われたり、第3者の戦火に巻き込まれたり……。

私が被災のダメージを持ったままレバノンに残って作品を作るということは、きっと出来なかったでしょう。共通の痛みを持つ、美しいこのハワイだからこそ、私が体験した苦しみを作品に顕わす、表現することができるんだと感じているの。

サーシャ:奥深いです…。幼い頃から絵を描くことはずっと好きだったんですか?

リーム:じつは、18歳まではアートが嫌いだったの。でも大人になるにつれて、アートの魅力がだんだんわかるようになってきて。

初めてアートの授業を大学院で受けた時は、自分のセンスのなさに失望したのを覚えてる…(笑)。

でも勉強を続けるうちに、「うまくならなきゃ」、「アートの世界についてもっと知らなくては」と思い、アートについて探求するようになったの。今もまだ学んでいる最中なんだけどね…。

 


サーシャ:絵画が嫌いだったとは…初耳です。リーム先生がアートを学ぶ上で、いろいろな困難があったんですね。アートって「良くはなるけれど、終わりがない」ですよね。

リーム:そうね、でもそれってとても楽しいことだと思うの。ある時、私の生徒に「歳をとるにつれて頭が固くなり、クリエイティブさもなくなり、探究心もなくなってくるのは本当ですか?」と聞かれたんだけど、私にはまだそういう感覚がなくてよくわからなかったんです。

たしかに、子どもの頃、「アーティストや画家になりたい」と言っていても、大人になると親が望む医者やエンジニアになる人をたくさん知っているわ。だから、大人になった今でも子どもの頃のように、好奇心を持ってアートに携われているってすごく特別なことだと感じるの。

リーム:学校の中では、誰もが輝いていて灯がともっているように見える……だけど数年後に社会人になったとき、学生時代に思い描いていた「将来の夢」ではない仕事を始めて、その灯がどんどん消えていってしまう人が多いと思うの。

私は学校で教鞭を執る中で生徒の灯の中に居て、授業が終われば自分のスタジオで制作活動をしているので、ずっと灯がついているところに生きている気がするわ。

サーシャ:そうなんです。だから、私は灯を感じられる大学のクラスに居るのが大好きだったんですよね。

 

シャングリラ邸に通い詰め、6カ月で2つの壁画を完成。

サーシャ:シャングリラ美術館にもリーム先生の作品が展示されていますよね。今日初めてシャングリラ美術館を訪れ、展示されているリーム先生の壁画を見て本当に感動しました! (アトリエに来る前に、リーム先生とリーム先生の作品が飾られているシャングリラ美術館に行きました)

シャングリラの壁画を手がけるきっかけは何だったんですか?

■ホノルル郊外、ダイヤモンドヘッド近くにあるシャングリラ美術館

リーム:シャングリラ美術館の改修プロジェクトの一環で、プールエリアに壁画の仕切りを置くことが決まっていたの。そのひとつをハワイのアーティスト、クリス・ゴトウさんが担当し、2つめを私が担当することになって。きっと私が大きなスケールの作品に慣れていることを館長は知っていたんだと思う。

壁画を完成するにあたって、約3カ月間、毎週火曜日にシャングリラ邸を訪れ、すべての部屋や部屋の細部にいたるまでスケッチしたわ。10月〜12月は現場と図書館でシャングリラ邸でリサーチをし、1月〜3月までの3カ月間で2つの壁画を描いたの。

サーシャ:…ということは完成まで合計で6カ月? …しかも2つも!すごいですね! かなりハードだったんじゃないですか?

リーム:私の性格上、いつも絵を描いていないと気が済まないの。サボると、描くときの体勢を忘れてしまうしね。アスリートにとってのトレーニングのようなものだと思う(笑)。

サーシャ:わぁ〜お!(驚)。
2つの壁画のうち、残念ながらひとつは工事中のエリアにあったので見られなかったですが、今回見た「Phoenix(フェニックス)」は本当に綺麗で輝いていました。テーマを教えていただけますか?

リーム:シャングリラ邸の持ち主であった女性、ドリス・デュークのことを、ほとんどの人は「パーティを開くお金持ち」というイメージで見ている気がします。でも私はそれだけではないと思っていて…。

作品を手がける間、心の中でドリスとたくさんの時間を一緒に過ごし、彼女はとても強い心を持った女性であると感じたの。

「フェニックス(不死鳥、この上なく美しく優れたもの)」は、ドリス自身を表す言葉だと思った。そして、彼女が持っていたフェニックスのタイルを壁画にもデザインしたの。

 

■シャングリラ邸の庭園に展示されているPhoenix(フェニックス)

サーシャ:たしかに彼女のことを「大きな家を持つお金持ち」と言う人が多いけれど、私は文化的な素晴らしい女性だと思います。世界中を旅して、イスラムの世界に魅了されて、それをハワイに持ち帰ってきた……ハワイにはこういった美術品を見られるところがあまりないので個人的にはすごくありがたいです。

リーム:そうよね。今では彼女の家が美術館となって、教育にも活かされているしね。太平洋の真ん中にあることも素晴らしいと思う。彼女が残した遺書には「ただの家として残すのではなく、美術館にしてほしい」と書いてあったらしいの。そのおかげで今のシャングリラ邸は、美術館として成り立っているのよね。

■細部にいたるまでドリスのこだわりが詰まったシャングリラ邸

サーシャ:今はそんなシャングリラ邸が一般公開もされツアーも開催されているって、本当に素晴らしいことだと思います。ハワイは異文化やアートが交差する場所となり、私たちのアートコミュニティも大きくなってきています。

リームさんのスタジオも壁画がたくさんあるカカアコにありますね。ハワイのアートコミュニティについてどう思いますか?

リーム:ホノルル美術館のキュレーターは、美術館の中にもハワイのローカルアーティストだけでなく、さまざまな国のアーティストの作品を展示できるスペースを作りたいと言っていたわ。ハワイにアートが増えることで、「ハワイの魅力はビーチだけではない」という印象をもたらすと思うの。

じつは、12月にニューヨークでハワイのアートに関するレクチャー「Debulking Preconception(差別の除去)」を行う予定で、ここハワイのアートコミュニティで何が起こっているのかを世界の人々に知ってもらう良い機会だと思ってる。

サーシャ:すごいですね!一緒にニューヨークに連れて行ってほしいな…(笑)。

カカアコのウォールアートも良いけど、美術館やギャラリーにも足を運んでほしい。

サーシャ:子どもの頃からハワイで暮らしていますが、ハワイにこんなに大きなアートのコミュニティができるとは思ってもいませんでした。ハワイには日本からたくさんの旅行者が訪れますが、ハワイのアートを旅行者が楽しむためのアドバイスはありますか?

リーム:カカアコの壁画の前で写真を撮るのも良いですが、ぜひ美術館やギャラリーに行ってハワイのアートに触れてみてほしいですね。そして、何か気になる作品などがあれば、作者のスタジオを訪ねてもう少し深く繋がってみてほしい…そこで購入したいと思える素敵な作品に出会えるかもしれないしね。

私は売ることを目的とした画家ではないけれど、すべてのアーティストは作品を購入してもらえることで利益を得られるし、彼らのサポートにも繋がるから。

サーシャ:私もシャングリラ美術館の改修工事が終わったら、リーム先生のもうひとつの壁画を見に再度訪れたいと思います。リーム先生、本日はどうもありがとうございました!

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★インタビューを終えて…

今回は第1回めのインタビューということもあり、とっても緊張していたのですが、先生の優しい笑顔を見て学生時代のときのように安心していろいろお話を聞くことができました。

中でも印象的だったのが、作品作りについてのお話。何カ月も構想を練り資料を調べてから、さらに時間をかけて作品を制作する……アート作品にかける先生の熱い想いに触れて、わたし自身、改めてアートに恋をしてしまった気がします。先生に刺激され、「絵を描きたい!」欲が収まらなかったので、帰宅後は夜遅くまでデッサンしちゃいました(笑)。

ワイキキからホノルル美術館へは、ザ・バスの2番で約20分。また、シャングリラ邸へはホノルル美術館からシャトルバス(水〜土曜、ガイドツアー参加者のみ乗車可能)が出ています。
ハワイ旅行中に美術館でハワイのアートに触れ、ひと味違ったハワイをぜひ満喫してみてくださいね!

 


 

新カバーモデルのサーシャ

サーシャ/Sasha

大阪生まれの日英バイリンガル。幼少から1年の半分は米国で過ごす生活を送り高校からハワイへ移住。17歳の時に出演したテレビ番組がきっかけでタレント活動を開始し、現在BS12 トゥエルビ「ハワイに恋して!」にレギュラー出演中。

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サーシャのツイッターはこちら>>>


★ハワイに恋して!最新情報★

次回放送日:11月10日(日)18:00〜
放送内容:大好評企画「ホテル活用術」の第二弾! 「ハワイ通になれる最新ホテル」をテーマにお届け。

ハワイに恋して!の公式ウエブサイトはこちら>>>

サーシャ/Sasha

大阪生まれの日英バイリンガル。幼少から1年の半分は米国で過ごす生活を送り高校からハワイへ移住。17歳の時に出演したテレビ番組がきっかけでタレント活動を開始し、現在BS12 トゥエルビ「ハワイに恋して!」にレギュラー出演中。

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