歴史を残したい…カウアイ島唯一の本屋を営む夫婦の想い

歴史を残したい…カウアイ島唯一の本屋を営む夫婦の想い

ローカルビジネスを応援する「サーシャのサポートハワイ」。カウアイ島にある「トークストーリー・ブックストア」のオーナーご夫婦にインタビューしました。

公開日:2022.08.02

ロコガールが紹介!サーシャのサポートハワイ

アロハ! サーシャです。

私が、ハワイのスモールビジネスやローカル企業、​デザイナー、アーティストの皆さんを応援する取り組み「サーシャのサポートハワイ」。今回はカウアイ島にある本屋さん「トークストーリー・ブックストア」のオーナー、エドさんとユリコさんご夫婦に、お店を初めたきっかけや今後の目標などについてインタビューしました。

エド・ジャスタス / Ed Justus(写真左)
アメリカ・バージニア州出身。2002年にハワイ・カウアイ島に移住。2004年にカウアイ島で唯一の本屋「トークストーリー・ブックストア」を開業。書籍を販売するだけでなく、古本やアンティークをリサイクルすることでハワイの文化や歴史の保存、継承に努める。

ユリコ・キハラ / Yuriko Kihara(写真右)
東京都出身。エドさんとの出会いをきっかけに、2019年イギリスからハワイ・カウアイ島に移住。「トークストーリー・ブックストア」のオリジナル商品をデザイン・販売する。現在は地元企業にてデータ&コンプライアンス管理担当をしながら「Yuriko J. Design」「Mochi-Celeste」のステッカーをダニエル・K・イノウエ空港をはじめ、マウイ島、カウアイ島、ハワイ島などのブディック、お店など20店舗以上で展開中。

トークストーリー・ブックストアの公式ウエブサイトはこちら>>>

 

築100年。夫婦が経営するカウアイ島唯一の書店

サーシャ:私は本が大好きで、トークストーリー・ブックストアさんに来ると「帰ってきた~」って懐かしい気持ちになるんです。トークストーリー・ブックストアをオープンした経緯について教えていただけますか?

トークストーリー・エド:トークストーリー・ブックストアは2004年に開業しました。当初、店を始める気は全くなかったのですが、2年間住んでいたクパアからハナペペに引っ越してきた際に、大家さんがビジネスをスタートするためのスペースを1カ月間無料で提供してくれ、同時に「どんなビジネスがしたいのか1カ月で決めなさい」と言われたんです。

当時は、Ebayで商品を販売していたのですが、在庫にあった書籍などを店舗に並べたら自然に本屋になったという感じです。あっという間に17年が経ちました。

 

サーシャ:ユリコさんは、エドさんがブックストアをオープンした頃、すでにエドさんと一緒にいらっしゃったんですか?

トークストーリー・ユリコ:私が彼と出会ったのは3年ほど前なので、当時はまだ一緒にいませんでした。

私はイギリスに15年ぐらい住んでいたんです。イギリス人の夫がいたのですが、癌で亡くなってしまって……。ちょうど辛い時期を過ごしていた時に、オンラインでエドと知り合いました。

サシャ:では、エドさんと出会った時、ユリコさんはイギリスにいらしたんですね。

トークストーリー・エド:僕はアメリカ・バージニア州出身で、ちょうど20年前にハワイに移ってきたんです。もともとハワイに行く予定はなかったんですけど、「ちょっと行ってみようかな」って軽い気持ちで来てみたら、今まで行ったどんな場所よりも故郷に帰って来た気分になってしまって。

生まれ育ったバージニアを故郷だと感じていなかったし、いつでも逃げ出したいと思っていました。実際にハワイに来るまで、「自分がいるべき場所にいる」って感じたことがなかったんです。

サーシャ:お互いに全く異なるバックグラウンドをお持ちなんですね。ユリコさんは、カウアイ島に実際に引っ越してみていかがですか?

トークストーリー・ユリコ:私はイギリスのウェールズという田舎町に住んでいたんですが、そこが大好きだったんです。カウアイ島に初めて来た時に、ハナペペの景色がウェールズの丘とすごく似ていて、「あれ、ここいいかも」と思いました。

サーシャ:このお店は以前、「ミカドストア」という店舗だったとお伺いしました。お店の歴史について少しお話していただけますか?

トークストーリー・エド:ハナペペは、中小企業の起業家たちによって形成された数少ない町のひとつです。「ミカドストア」は、日本から移住してきた人たちが、サトウキビ会社の中にあるような信用販売を行う店ではなく、一般的な市場を持ちたいと考えて開業した店舗だったそうです。

ヨシウラ商店(1932年撮影)

 

しかし、第二次世界大戦でミカドストアから「ヨシウラ商店」に代わり、布の束や日本から持ち込まれた品々など、ありとあらゆるものを取り扱っていたそうです。とても人気のある店で、多くの住民がここがヨシウラ商店だったということを今でも覚えています。当時、店舗の外観が赤かったので、みんな「赤い店」と呼んでいたらしいんですが、「古いものに敬意を表しながら、新しいものも取り入れたらどうだろう」と考え、トークストーリー・ブックストアの店内にも赤を取り入れることにしました。

サーシャ:この建物は第二次世界大戦の前からあるとおっしゃいましたが、築何年くらいなんですか?

トークストーリー・エド:築100年くらいですね。

サーシャ:とても歴史のある建物なんですね。

トークストーリー・エド:ハナペペで最も歴史のある建物のひとつです。ハリケーンによって多くの建物がダメージを受け、現存しているのはこの建物と隣りのアロハシアターだけです。

サーシャ:すごい! あと500年は残っていてほしいですね。

トークストーリー・エド:そうですね、建物に命が宿っているような感じです。ヨシウラ商店が残した魂が私たちの店を祝福してくれているのかもしれないですね。

 

ハワイの情報や文化、歴史を保護・継承することが使命

サーシャ:お店を始めて17年とのことですが、一番人気の書籍のジャンルは何ですか?

トークストーリー・エド:ハワイ関連のものです。

サーシャ:地元の方にも人気ですか?

トークストーリー・エド:地元の方は、ノンフィクションのハワイ関連のものを好みますね。新品と中古の両方を取り扱っていますが、もう見ることのできない人々や風景、建物などの写真が掲載された1950年代の古いパンフレットを手にする機会もあり、中古品の中から、ハワイの歴史や文化について、知らなかったことを発見できることもあります。ハワイの歴史やハワイについて書かれている本を収集しハワイの情報を入手するのが私たちの使命のひとつなんです。そのほか、ハワイの文化の保護と継承にも努めています。

サーシャ:古い本や雑誌などは、どうやって収集していらっしゃるのですか?

トークストーリー・エド:最近は、お客さんからの持ち込みが多いです。20箱分の本をトラックに積んでやってきて「この本を全部差し上げます」と言う方もいるんですよ。そうなるとこちらも「わかりました、引き取るようにします」って(笑)。

お客さんには、「とにかく何でも持ってきてください、残せるものは残し、残せないものは寄付します」と伝えるんです。ほとんどの人が、本についた少し古いシミをカビだと思うんですが、それは単なる経年劣化で、紙の中に含まれる酸が変色しているだけなんです。

実際には、皆さんが思っているよりもずっと多くの書籍が保存可能です。私たちは、おそらく100万冊以上の書籍をゴミ処理場から救ったと思います。中古の書籍を収集することは、リサイクルに貢献すると同時に、人々に書籍を楽しんでもらうための救済活動でもあると感じていて、このような機会に恵まれていることに感謝しています。

トークストーリー・ユリコ:私たちの店舗は郡のウエブサイトで「リサイクル」ってカテゴライズされているほどです。

サーシャ:そうなんですね!ビニール製のカバーに入れられた1800年代の書籍を見せていただきましたよね。

トークストーリー・エド:書籍などをビニール製のカバーに入れるのは10年ほど前からやっています。ほとんどのお客さんはアンティークや古書をあまり扱ったことがないため、本を棚から取り出すときに上部を指でつかんで背表紙を剥がしてしまうことがあるんです。また、私たちの手の油はとても強力で、人がずっと触れていると製品が劣化してしまいます。お客さまが商品を購入する時にできるだけ良い状態を保てるように、そして最高の状態で商品を楽しめるよう、ビニール製のカバーに入れることにしています。

ビニール製のカバーに入れられた書籍

 

サーシャ:とても慎重に扱っているんですね。

トークストーリー・エド:バッグやプラスチックのカバーに入れると、博物館の展示品のようにカバーの中身に魅了され、お客さんにもっと価値を感じていただけるようです。1950年代のParadise of the Pacific誌も、ただ積み重ねられているだけだと「ああ、面白いな」と思うだけですが、ビニール製のカバーに入れてあると、ただ古いというだけでなく、評価されるべき価値のあるものだと思ってもらえるんです。

本屋をやっていて最もやりがいのあることは、ひとつひとつのことが人々の生活に役立っているという事実です。人々の生活に影響を与えるだけでなく、文化や文明に影響を与える。ほんの小さなことが結果的に大きな違いを生むんです。

ユリコ:以前、ポリネシアやハワイの伝統的な織り方などを学んでいるカウアイ島在住のアーティストの方が来店したことがありました。

トークストーリー・エド:そうそう、その時にあまり状態が良くなくて普通の人なら捨ててしまうようなハワイの織物に関する書籍があって、それを彼女に見せたんです。そうしたら、「これこそ私が新しいプロジェクトを始めるために必要なものよ! 」って。そんな風に、情報が大切に評価されているのを見るのは本当に嬉しいです。

サーシャ:すべての情報や文化、歴史を保存していくって素晴らしいことですね。

トークストーリー・エド:本屋を経営している醍醐味ですね。あらゆる事柄について少しずつ学ぶこともできて、果てしなく面白いんです。

サーシャ:本屋と言っても、日本の一般的な書店とは趣が異なっていますよね。

トークストーリー・エド:トークストーリー・ブックストアは、サービス業というか雑貨屋さんみたいなものです。本屋は、その場所にある文化の象徴だと思うんです。この店にあるものはすべて、ここに住んでいる人たち、あるいは住んでいた人たちの興味が凝縮されているんです。そして、これがカウアイ島の人々の生活を反映しているのだと訪れる人々を驚かせ、魅了するんだと思います。

トークストーリー・エド:ただ単に新しい本が置いてあるだけの書店、ラウンジのように居心地の良い空間を作ろうとしている書店もあります。うちはその両方が混在しているような店づくりを目指しています。新刊本と古本は分けずに全部一緒にしています。そうすることで、自分では気づかなかった新しい発見をすることができるんです。

サーシャ:近年、若い世代の紙の書籍離れが起こっていますよね。

トークストーリー・エド:個人的には、若い世代より年配者の方が、キンドルのような電子書籍に移行しているように思います。電子書籍なら文字を大きくして読むこともできるし、簡単に多くの書籍を読めますからね。反対に、若い世代の方が物理的なメディアに興味があるように感じています。例えばレコードが復活してきていますよね。若い世代の人々はデジタルコンテンツと共に育っているため、レコードのような物質的なメディアを通して歴史や文化を体験する方法がなかった。だから、直接的な体験ができるものに注目するようになっているのではないかと思っています。

サーシャ:私自身も両親がレコードを持っているので聞いたり、家にある大きな本棚から本を手にして読んでみたりすることがあります。物質を通しての様々な文化を体験することが日常にあって、気が付くと精神的にも安定する感じがするんですよね。読むことだけが目的ではなく、物質を通して文化を体験する若い世代が増えてきていることは嬉しいです。

 

体験やサービスを売りたい……パンデミックで新たな選択肢が広がった

サーシャ:新型コロナウイルスのパンデミックの時は大変でしたか?カウアイ島は実質、島への上陸が制限されていましたよね。

トークストーリー・エド:売り上げが減少して、非常に苦しい時期もありましたが、地元の方々が買い物に来てくれて、売り上げが約10%アップしました。本当に有り難かったです。島内や島外、あるいは他の地域からオンラインで商品を購入してくれる方もたくさんいましたし、寄付や援助もあったおかげで厳しい時期を乗り切ることができました。生活費を稼ぐために、私物をたくさん売ったり、新しい本もたくさん送り返したりもしましたけどね。あとは、ユリコがカウアイコーヒーで正社員として働きました。

トークストーリー・ユリコ:生活費を稼ぐためにも何かやらなきゃということで、最低賃金で4カ月契約という条件で就職しました。

トークストーリー・エド:できることはすべてやるしかなくて、最悪の状況の中で最善を尽くしました。その結果、新型コロナウイルスのパンデミックによって、自分たちがもっと力を入れたいと思っていたヴィンテージブックのコレクションに注力できるようになりました。入店してヴィンテージの本を見つけると、一般的な書店では味わえないような、ユニークな体験ができるんです。当店では、思いもよらなかったような物を発見することができ、それが人々に感動を与え持ち帰ってもらうことに繋がると思うんです。

トークストーリー・ユリコ:私たちは価格競争はまったくできませんが、地元のギフトやアートなど、体験やサービスを売ろうとしているんです。おかげで「ネットで買うより、うちで買いたい」とも言われるようになりました。

 

サーシャ:素敵ですね!今後の活動や目標について教えていただけますか?

トークストーリー・エド:一番の目標は、店を継続させることです。できるだけ多くの書籍やモノを救い出し、それらが発見される機会をできるだけ多く提供することが、私たちの最大の目標です。

トークストーリー・ユリコ:大変なことではありますが、建物の保全にも努めたいですね。

トークストーリー・エド:私たちはこの建物をできるだけ長く保全することができたらと思うんです。だって、歴史の一部なんですから。何世代にもわたって人々がそれを体験できるように、これからもずっと残しておきたいです。

サーシャ:ユリコさんには何かゴールはありますか?

トークストーリー・ユリコ:やっぱりハワイに関する本をなるべく保存していくことですね。あと、こちらには日系の方も多いので日本の古書とかもあるんですが、そういうものはどんどん捨てられてしまう可能性があるので、なるべく保存していくようにしたいと思います。日本のセクションに少しだけ古書とかも残っているので、その日系人の方々がどういう風な本を読んでいたとかを残していきたいです。

サーシャ:素晴らしいですね。ここには本、アート、ステッカー、マグカップ、ヒストリー、カルチャーなど、残していきたいものがすごくたくさんありますよね。文化、歴史、芸術、あらゆるものを保存するというコンセプトは、とても大切だと思います。とくに今は、みんながその価値をあまり知らないので、とても重要ですよね。

最後に日本の読者の方々へメッセージをお願いします。

トークストーリー・ユリコさん:カウアイ島は他の島に比べて雨が多いってよく言われるんですけど、じつはそんなことはなくて、ワイアラエアレの降水量が多いだけなんです。その分、自然であふれていて、見るところもたくさん。ビーチもきれいですし、ほんとにいい所なので、ぜひカウアイ島を訪れていただきたいです。とくにハナペペはディズニーのリロ&スティッチの町でもありますしね。

サーシャ:そうか、リロ&スティッチの町なんですね~。

トークストーリー・ユリコ:そうです。スティッチが初めて不時着した街がハナペペなんです。スティッチを拾ったアニマルセンターも見ためがそのままです。犬だと思われてケージに入れられてたところもそのまま。いろんな隠れスティッチが街中にあるんですよ。うちの壁にも小さな隠れスティッチがあります(笑)。

サーシャ:隠れスティッチを探しながらハナペペの街を散策した後に、トークストーリー・ブックストアに立ち寄って素晴らしい空間の中で本を選んだり、ビンテージの物を買ったりできますね。ここでお買い物をすることはリサイクルの手助けにもなるので、ぜひ皆さん立ち寄ってみてくださいね~。

 


★インタビューを終えて★

トークストーリー・ブックストアさんとは、これまでずっとオンラインでお話をしてきていましたが、実際にお会いしてカウアイ島と日本人の深い繋がりなどを教えていただき、本屋という形で文化を残すことは歴史的にもカウアイ島にとっても私たちみんなにとっても大事なことだと実感しました。お二人の頑張りやミッションを多くの人に知ってほしいとより一層思いました。
今回、サンサーフさん(sunsurfaloha)のご協力でカウアイ島にこれてお二人に会えました。サンサーフさんありがとうございます!!
みなさんもカウアイ島に行かれたら、ぜひトークストーリー・ブックストアーさんへ行って本やグッズを買って応援してください!

 

\ トークストーリー・ブックストアからのお知らせ /

ユリコさんがデザインしているトークストーリー・ブックストアのオリジナルトートはトークストーリー・ブックストアのオンラインから購入可能です。今後もトークストーリー・ブックストアのオンラインショップでは、さまざまなアイテムが買えるようになるのでお楽しみに!

トークストーリー・ブックストア

住所
3785 Hanapepe Road, Hanapepe HI 96716

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電話番号
(808) 335-6469

サーシャ/Sasha

大阪生まれの日英バイリンガル。幼少から1年の半分は米国で過ごす生活を送り高校からハワイへ移住。17歳の時に出演したテレビ番組がきっかけでタレント活動を開始し、現在BS12 トゥエルビ「ハワイに恋して!」にレギュラー出演中。

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