注目の女性シェフ!小川苗さんにインタビュー

注目の女性シェフ!小川苗さんにインタビュー

12月17日にオープンしたレストラン「ナチュール・ワイキキ」。女性エグゼクティブシェフとして働く小川苗さんに、レストランへの想いなどさまざまなお話を伺いました。

公開日:2022.01.07

楽園の仕事人

 

アロハ!ノゾミです。

ハワイで数々の人気レストランを運営するZETTON, INC.が手がけるアイランドフレンチレストラン「ナチュール・ワイキキ(natuRe waikiki)」が、つい先日「パリ・ハワイ」のあった場所にニューオープンしました。

 

今回は、そんな注目のレストラン、ナチュール・ワイキキでエグゼクティブシェフに就任した小川苗さんにインタビューさせていただきました!

小川苗/Nae Ogawa

小川苗/Nae Ogawa

1992年生まれ。服部栄養専門学校を卒業後、「NARISAWA」(東京)ヘ就職。その後、ニューヨーク、パリのレストランで経験を積み、ハワイへ。35歳以下の若手料理人の発掘・応援を目的とした日本最大級の料理人コンペティションであるRED U-35 2019では、GOLD EGGおよび岸朝子賞、滝久雄賞を受賞。

「持続可能な未来のため」コンセプトに込められた想い

───アロハ!なえさん。ナチュール・ワイキキのオープンおめでとうございます!今日は色々とお話を聞かせてください。まず、お店のテーマとして「持続可能なハワイを作っていく」という考えが根底にあると思います。このテーマやコンセプトについて、料理長であるなえさんの考えを教えてください。

なえさん:ファームトゥテーブルや、地産地消というのは結構前から言われていましたが、そのもう一歩先を考えて、それが続いていくためにはどのようなアクションを起こしたらいいのかなという想いがありました。

このテーマは、まさに私がやりたかったテーマそのものなんです。ハワイに来てから、自然に触れる機会が多くなり、その自然が大好きになって、守っていきたい、未来につなげていきたいという想いが生まれました。今まで料理人として生きてきましたが、食材が自然とつながっていることをあまり意識する機会がありませんでした。でも、ハワイに来てから、食材って自然そのものだなと思うようになって。

ハワイに来て、自然や地球環境を守っていく活動をしたいなと思うようになり、それが本当に私がやりたいことなんだろうと確信しました。そして、料理人という立場から、自然や地球の環境を守っていくためには私には何ができるか考えて、だったらそういうレストランを作ってみたらどうだろうと思ったんです。そしてそれは、私自身の夢でもあったんです。

 

───じゃあまさに、なえさんの夢が叶ったということですね。すごい!

なえさん:そうですね、夢が叶いました!形になってよかったです。コロナウイルス感染症が流行して、以前働いていたパリ・ハワイがクローズしてから、自分自身色々と考える機会が増えたんです。そこで自問自答して、私が本当にやっていきたいことは地球環境を守ることで、そういう活動を通して地球に貢献したいなと思うようになりました。そしてありがたいことに、私がやっていきたいこととゼットンがやっていきたい方向が同じだったということですね。

 

───お店づくりも一から携わってきたのですか?

なえさん:はい!もう、すごく楽しかったです!お店づくりってこんなに楽しいんだって思いました。食器類なども、どうせなら地元のアーティストさんをサポートしたいと思って、ローカルのアーティストさんのものを使わせていただいたりとか、そういうひとつひとつが楽しかったです。

 

───お店がオープンするまではかなり忙しかったんじゃないですか?

なえさん:目が回るくらい忙しかったです(笑)。でも、私はやっぱり忙しくしているのが好きだなと実感しました。何か目標があって、それに向かっているときは、忙しくても楽しいなぁって。

 

───フレンチにも色々とあると思うのですが、ナチュール・ワイキキならではの個性とは?

なえさん:ファインダイニングにはしたくないと思っていて、美食家の人に来てもらいたいというよりも、できるだけたくさんの人たちに来てもらって、体験してもらいたいなと思うんです。だからアラカルトなどカジュアルな面もありつつ、コース料理もパリ・ハワイの時より値下げしています。アラカルトの方は、ワインとつまみなどカジュアルな使い方をしてもらって、気を張らずに来てもらいたいなと。

その上で、地元の食材を使うということは、メインランドの食材を使うよりもコストは高くつくので、その点は理解してもらいたいなと思っています。

 

───カウンター席は、お客さんと対面で料理を作るという形になっていますよね。

なえさん:私は性格的にはスポットを浴びたいタイプではないので、目立ちたいわけではないんですけど(笑)、お客さんの反応を直に見れたり、声を聞けたりするのはすごく嬉しいです。

でも、個室もそうですが、アラカルトで明るいうちにちょっと飲んだり、お食事後にバーに来てもらったりとか、いろんな使い方をしてもらいたいなと思います。

 

まずは美味しく、楽しく食事をしてほしい

───では、このお店に来た人に、美味しい料理体験はもちろんですが、感じてほしいことや考えてほしいことなどはありますか?

なえさんそうですね、まずはハワイの魅力を伝えていきたいのが第一にあって、訪れてくれたお客様が美味しく、楽しく食事をしてくれることですね。それが自然と地球に貢献していくと思うんです。そこでさらに気づきや新しい発見が提供できたなら、それ以上の喜びはないですね。

「この食材は食べない方がいいよ」とか、そういう強制的なことではなくて、楽しく食事をしてもらうことが、自然とこのお店のテーマにつながっていくといいなと思っています。

 

───コースメニューは2種類だと伺っているのですが、これはなぜですか?

なえさん:コースメニューは、レギュラーコースと、完全プラントベースのヴィーガンコースを用意しました。レギュラーコースだけでなく、ヴィーガンコースも作った理由は2つあって、まずひとつめは、アレルギーや宗教などさまざまな理由から食に制限のある人たちでも、食の制限のない一般の方と一緒に来て楽しく食事ができるように。

  • レギュラーコースで2番めにサーブされるのは「モロカイ ベニソン」。モロカイ島の鹿肉を使ったパテで、この食材を使う背景には、アクシスジカの爆発的な増加などがあるそうです。

  • ヴィーガンコースをオーダーすると、同じタイミングで「エッグプラント/トマト/フィンガーライム」がサーブされます。ノースショアのナスを使い、トマトのコンソメジュレとあわせたハワイの野菜の瑞々しさが詰まった一皿。

  • レギュラーコースのメイン「ビッグアイランド ビーフ/アフプアア」は、ハワイアンが大切にしてきた「山から海へ」という言葉が一皿に表現されています。

  • ヴィーガンコースのメインには「ポートベローマッシュルーム/ラウラウ」が登場。ハワイの伝統料理であるラウラウと、フランス料理のパイ包み焼き、それぞれの伝統料理の融合が楽しめる逸品。

もうひとつは、近年環境保護の一環としてお肉やお魚を食べる量を減らしましょうという動きがあります。たとえば月曜日だけお肉を食べないようにしましょうというアクションが、環境保護につながるんです。

現在、お肉が大量生産されていますが、そのエサを作るために森林伐採が進んでいたり、大量の水を使っていたりして、食肉の生産が環境破壊につながっているという事実があります。魚に関しても、乱獲されているため生態系が壊されている。だからその分、もっと野菜を食べるようにすることで、環境保護にもつながるという考えもあるんです。

 

───持続可能な未来を作ることを考えた時、お客さんはどのような態度で臨めば良いですかね?

なえさん:まずは楽しく食事をしていただくのが1番ですね。私たちが買い付けた食材を消費してもらうということ自体が、もう地球貢献に繋がっているので。

そして、ハワイの自然の魅力を伝えられたり、どのようないきさつでこの肉を使っているかなど、ハワイの現状を知っていただけたりすれば、それで十分だと思うんです。提供されたものをまず楽しんで、その背景にあるものを知っていただけたらそれでOKです。

 

QRコード付きのメニュー

メニューのQRコードを読み込むと、そのメニューの解説が読めるんですよ。そこでどのような材料を使っているかもわかります。ひとつひとつのメニューにストーリーがあるので説明することもできるのですが、それを全部語っていたらお腹がいっぱいになってしまうと思うんです(笑)。だから時間があるときでも良いのでQRコードから、料理の背景などを少し知っていただけるだけでもう十分です。

 

女性スタッフがキッチン周りを担当

───女性料理長という立場のお話もお聞きしたいのですが、ナチュール・ワイキキではキッチン周りを女性スタッフだけで切り盛りすると伺いました。

なえさん:そうなんです!キッチンで料理を一緒にしているスタッフも女性、洗い場の担当者も、バーテンダーも女性なんです。

 

───とても面白いですし、時代に合った試みですよね!キッチンを女性スタッフで切り盛りするようにしてから、心がけていることなどはありますか?

なえさん:私自身、10年くらい料理人をやっているのですが、男性と比べると力も弱いですし女性ということで苦労したこともあって、もう少し女性もキッチンで活躍できる仕組みを作りたいなと思っていたんです。

繊細さを感じるデザートメニュー

だから普段から、女性が働きやすいような環境が作れるよう意識しています。一般的に女性の方が繊細で細かいところに気づくので、そういった面を活かしていきたいなと思っていますね。

 

───女性ならではの感覚を取り入れていけば、素敵なレストランになりそうですよね。今までさまざまな苦労もされたと思いますが、困難が降りかかっても乗り越えられるモチベーションは何ですか?

なえさん:やっぱり料理が好きなんでしょうね。本当にすごく料理が好きなんです。

料理人を目指したのは10代の半ばからですが、思い返してみると子どもの時から、朝ごはんを作ったりお菓子を作ったりしていましたね。母がもともと料理が好きで、家で梅干しを作ったりケーキを焼いたりしていたので、その影響もあるかもしれないですね。

でも、つらすぎで何回も辞めたいと思いました。辞めないことが一番つらかったかもしれない。でも今となっては、他の道は考えられないです。

 

───料理長というと、もっと年上の方が多い業界かと思いますが、まだお若い年齢でこのお店を任されたというプレッシャーなどはありませんでしたか?

なえさん:プレッシャーよりも喜びの方が多かったかもしれないですね。ワクワクしています。もちろん不安に思うこともあるんですけど、もっともっと実力を付けたいと思っています。料理の技術に関してはゴールはないと思っているので、学び続けたいですね。

 

自分の好奇心に従って挑戦を続けたい

───ポジティブでとっても素敵です!ニューヨークやパリでも経験を積まれたなえさんですが、最初に海外に行こうと思われたきっかけなどはありますか?

なえさん:最初に就職したのが、東京にある「NARISAWA」というレストランだったんですけど、海外からの研修生を受け入れていたり、海外で研修があったりして、外国とは近い環境にあったのも大きいと思います。あとはやっぱり常に挑戦しているのが好きなんだと思います。「次は何!?次はどこ!みたいな(笑)」。

 

───日本に戻る予定などもありますか?ハワイにいて欲しいけれど、日本でなえさんの料理を食べたい人もたくさんいそうです。

なえさん:日本に帰ろうという選択肢もありますね。でも、ニューヨークに行くときも1年で日本に帰るって言ってきてまだ帰っていないので、帰る帰る詐欺です(笑)。

 

変化が目に見えてわかるのはハワイならでは

───最後に、お店やなえさん自身の今後の目標があれば教えてください。

なえさん:ハワイにある1軒のレストランが地球にできることって限られているとは思うのですが、それが積み重なって地球の環境保護のアクションにつながっていけば良いなと思います。

そういう意味では、ハワイは自分で目に見える範囲で変化がわかるので良いサイズ感だと思っているんです。実際に農家さんに会いに行ってこの食材が余っているということがわかって、それを買いつければ農家さんのサポートになるって目に見えてわかるんです。

自分の行動で変えていけるものがわかるのは嬉しいですね。そうして循環するサイクルを作っていくことが、持続可能な未来に繋がっていくと思います。

 

───なえさんご自身の目標もお店の目標と重なっているということですよね。

なえさんそうですね。「Eat Local」と言っている農家さんは結構いるけど、そのもう一歩先を考えていきたいです。ハワイには環境に配慮している農家さんがたくさんいて、そういう人から食材を買いたいと思いますし、取引していきたいです。

 

───消費者としては、そういう意識の高い生産者の方がいるということもあまり知らないので、橋渡しのような役割をしてくれるなえさんのような方がいるととても助かります。

なえさん:橋渡しのような役割をさせていただけるのは本当にありがたく思っています。ただ、どこに橋をかけるかはとても気にするようになりましたね。でも、素敵な農家さんて、他の素敵な農家さんとつながっているので、よく紹介してもらっています。

最近だと、取引をしている農場に足を運んでお話を聞いていたら、牛を購入する際に多くの人が高級な部位だけを買っていくから困っているというお話が出たんです。だから「うちは牛丸一頭買います」と(笑)。でも、それはもう大変なことなんですよ。

ただ命を余すことなく大切に頂く、という想いが私個人だけでなくチームで強く想っているからこそ、ゼットンが持つバラエティー豊かな業態で、一頭の牛から各店必要な個所を購入し、一頭丸ごと購入という困難なハードルをクリアーしようとしてます。
この事に限らずサスティナブルに対して、個人とチームが真剣に向き合ってるからこそクリアーできるハードルが沢山あると思っています。

それから、料理を作ろうと思った時に、食材ファーストになりましたね。お皿に何もないところから考えるのではなくて、こういう食材で困っているとか、この農家さんのこの食材を使いたいとか、食材があってそこから何を作るか考えるようになったので、料理の仕方が変わりました。もちろん大変なんですけどね。

 

───なえさん、今日は素敵なお話をありがとうございました!

なえさん:ありがとうございました!

 


★インタビューを終えて…

今回は、私自身なえさんと同世代ということもあり、レストランについてはもちろんですが、なえさん自身についても興味津々で臨んだインタビューでした。なえさんとお話していて何よりも強く感じたのは、「料理が大好き」だということ。好きなことをしている人って、周りにパワーを与えてくれて、本当に美しいなと改めて思いました。

そして、持続可能な未来を作るため何ができるのか、彼女ならではの考えを持っていて、それを行動に移していること。やりたいことを口にしていたら、形になったとおっしゃっていましたが、共感してくれる人が周りにいて抜擢されるというのは、やっぱりなえさんが素敵な人だからだと思います。

ナチュール・ワイキキのコンセプトも特徴的で、地産地消という考えはもともとよく聞いていましたが、その一歩先を見据えてできることを私自身考えていきたいなと、色々と感銘を受けました。皆さんもぜひ、ナチュール・ワイキキで美味しくてハワイのためになるお食事を楽しんでくださいね。

ナチュール・ワイキキ

住所
413 Seaside Ave #2F, Honolulu, HI 96815

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電話番号
808-212-9282
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