ユニークな神話が残るオアフ島東部のココヘッド

ユニークな神話が残るオアフ島東部のココヘッド

ハワイの歴史・文化に詳しいライター・森出じゅんさんのコラム第31回。今回はオアフ島東部のココヘッドとココマリーナについてのお話です。

公開日:2023.01.30

森出じゅんのハワイ歴史&神話散歩

ココヘッドの古称にまつわる
神カネアプアの物語

Aloha! ホノルル在住の森出じゅんです。

ハワイ文化に焦点を当て、ちょっと意外なハワイの横顔を紹介するこのコラム、今回はオアフ島東部のココヘッド&その周辺の神話をお届けします。前回の「オアフ島にもある女神ペレ神話の舞台」で、ココクレーターの起源にふれたところ、大きな反響をいただきました。その隣に位置するココヘッドにもユニークな物語が残りますので、以下、説明しましょう。

その前に、ココクレーター&ココヘッドについて事実関係を整理すると…。この2つの山の名やロケーションを混同している人は、実に多いものです。在住者であっても「ココヘッド内のクレーターがココクレーター」と勘違いしていたりします。実際には、ココクレーターとココヘッドは全く異なる2つの山。下の写真を見るとわかりやすいのですが、左側がココクレーター、右側がココヘッド。ココヘッドは比較的平坦な山なのですね。

 

ココクレーター(左)の標高は362メートル、ココヘッド(右)は192メートル

 

ちなみに山頂に向かって一直線に伸びるきついトレイルで知られる以下の山は、ココクレーター。ココヘッド・ディストリクトパーク内にあるので、そちらがココヘッドだと思っている人がいますが、事実ではありませんので念のため。

ココクレーター・トレイル

 

前回のコラムでは、ココクレーターが女神ペレの妹である呪術の女神、カポが投げた陰部であることをお話ししました。一方ココヘッドは、ハワイ四大神であるカネとカナロアの、末の弟にまつわる神話が残ります。

ある日、カネとカナロアは弟のカネアプアに、ココクレーター山頂近くの泉で水を汲んでくるよう命じました。その時、2人は弟に厳命したのです。「何があっても、山で立ち小便をしてはならないぞ」。それは山への敬意からの言葉だったのかもしれません。または淡水を司る神であるカネが、何かしら山の泉の秘密を心得ていた可能性もありますね。

いずれにしろ、兄からの厳命を破って山を汚してしまったカネアプア。気分はすっきりしたものの、その後、不思議なことに泉は干上がってしまいました。こうして兄たちの怒りを買ったカネアプアは、自らを恥じて山になりました。それが今ではココヘッドと呼ばれる、あの山というわけです。ちなみにその古称は、モオクア・オ・カネアプア。ハワイ語で「カネアプアの背骨」を意味しています(モオクア・オ・カネアプアとは、ココヘッド山頂近くの丘の名だとする説もあります)。

 

マウナルアベイビーチパークから眺めたココヘッド

 

ハワイ語でココは「血」。
地名の由来になった事件とは?

ところで、ココヘッドのココは、ハワイ語で「血」。ココクレーター、ココカイなど一帯にはココのつく地名が残りますが、以下のような少し恐ろしい神話にまつわるものです。

大昔のこと。ココヘッド近くの海辺に住む酋長夫妻を、遠方から娘が訪ねてきました。娘は赤ちゃんの時に養子に出されていたので、実の両親にひと目会いたい! と、はるばるやって来たのです。ところがあいにく両親は不在だったので、少女は両親の庭に植えられていたサトウキビを食べながら、両親を待つことに。やがて、両親が帰るまでひと泳ぎしようと、海に入っていきました。

その一部始終をこっそり見ていたのが、近隣の鮫の神でした。実は酋長は日頃から鮫の神に頼んでいたのです。「もしも勝手に我が家の作物を食べる者がいたら、退治してくれ」と…。そのため鮫の神は少女に襲いかかると、瞬く間に噛み殺してしまいました。少女が酋長の実の娘であるとも知らずに。その時に一帯の土地が真っ赤に染まったので、周辺の土地がココ…と呼ばれるようになったそうです。

そのくだんの酋長夫妻が住んでいたのが、ココヘッドの麓近くに広がるポートロックビーチ。昔ここにココと呼ばれる船着き場があり、鮫の事件は船着き場近くでの出来事だったそうです。

ポートロックビーチ&ココヘッド

 

今やポートロックビーチ沿いは高級住宅地に

 

メネフネ族が築いた?
ココマリーナの秘密

最後にもう一つ、ココヘッドにほど近いココマリーナのユニークな逸話を紹介しましょう。ココマリーナは昔、広大な養魚池として使われていた過去があります。古代のハワイアンは自然のラグーンを石壁で囲い、養魚池として利用する技術に長けていました。現ココマリーナ、またはハワイカイマリーナと呼ばれるラグーンは昔、ハワイ最大の養魚池で、クアパー養魚池と呼ばれていました。その広さは523エーカー。

 

その石壁は、一説によると伝説上の小人族メネフネが築いたものとか。メネフネは手先が器用で、養魚池や神殿など石造りの建造物を各地で造ったとされています。クアパー養魚池もその一つ。しかも不思議なことに、クアパー養魚池は地下水路でカイルアの養魚池と繋がっているとの説があります。クアパー養魚池からある種の魚が全て消え、カイルアの養魚池に出現したり、その逆の現象が記録されているというから驚きですね。

ココマリーナやポートロックビーチを含むハワイカイ一帯は、今では高級住宅地として開発されていますが、土地の神話や歴史をひも解いていくと、全く異なる神秘の土地として目に飛びこんでくるから不思議です。ハワイカイ周辺での神話&歴史散歩、ぜひ一度楽しんでみてください!

 

 


 

「やさしくひも解くハワイ神話」は現在3刷目 。
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森出じゅん/JUN MORIDE プロフィール

オアフ島ホノルル在住。横浜出身。青山学院大学法学部卒業後、新聞・雑誌・広告のライターとして活動。1990年、ハワイ移住。フリーランスのジャーナリストとして活動するかたわら、ハワイの文化や歴史、神話・伝説、民間伝承を研究中。単に「美しいハワイ」にとどまらないハワイの奥深い魅力、真の姿を日本に発信すべく、執筆を続ける。2012年からハワイ州観光局の文化啓蒙プログラム「アロハプログラム」講師。著書に「ミステリアスハワイ」(ソニーマガジンズ刊)、「ハワイの不思議なお話」(文踊社刊)、「やさしくひも解くハワイ神話」(フィルムアート社)、「Hawaii 神秘の物語と楽園の絶景ーハワイの人々が愛する100の神話」(パイインターナショナル刊)がある。

☆ブログ「森出じゅんのハワイ生活」>>

☆ハワイ州観光局アロハプログラム>>

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