オアフ島にもある女神ペレ神話の舞台

オアフ島にもある女神ペレ神話の舞台

ハワイの歴史・文化に詳しいライター・森出じゅんさんのコラム第30回。今回はオアフ島に残る火山の女神ペレの軌跡についてのお話です。

公開日:2022.11.29

更新日:2023.01.27

森出じゅんのハワイ歴史&神話散歩

火山の女神ペレが創りあげた
ハワイのランドマークとは

Aloha! ホノルル在住の森出じゅんです。

ハワイ文化に焦点を当て、ちょっと意外なハワイの横顔を紹介するこのコラム、今回はオアフ島に残る女神ペレの軌跡をテーマにお届けします。ペレはハワイ全体の火山を司る女神。ちょうど27日夜から、ハワイ島マウナロア火山が噴火しましたね! ペレはこのマウナロア火山とともにハワイ火山国立公園を構成する、キラウエア火山のハレマウマウ火口に住むとされています。

そんなことからハワイ島限定の女神との印象が強いですが、女神ペレの物語は各島で知られ、たとえばオアフ島にもペレ神話の舞台が点在。あのダイヤモンドヘッドも、ペレにまつわるダイナミックな神話の舞台です。この記事では、日頃私が目にしているオアフ島のペレゆかりの地をご紹介しましょう。

 

ペレ神話を題材にしたハーブ・カネ氏の書籍

その前にペレの基礎知識を少しだけ語りますと…。ペレは火山の権化で、漆黒の髪を持つ絶世の美女。気性が激しく怒りっぽく、ペレが怒ると火山が噴火すると信じられています。2018年にキラウエア火山が噴火した際は世界的な大ニュースになりましたが、今回のマウナロア火山噴火も、驚きの眼差しとともに世界から注視されています。何せ1984年以来という久々の大噴火ですから…。

以上のようにハワイの神々のなかでも知名度抜群のペレですが、実は元々はタヒチ生まれの女神です。一族を率いて海を渡り、ハワイにやって来ました。その理由がペレらしいといいますか…。姉で海と水の女神であるナマカオカハイの夫を誘惑し、島を追われたとされます。いや、旅を熱望したペレが自分からタヒチを出たのだ、いや洪水から逃れるためだったなど諸説がありますが、誘惑説が有力。というのも姉がハワイまでペレを追いかけ、行く先々でペレの旅を妨害したからです。

ペレと姉ナマカオカハイの戦いを描いたハーブ・カネ氏の作品
(キラウエア火山の旧ジャガー博物館の展示より)

ペレはまずハワイ主要8島の最北、ニイハウ島に到着し、終の棲家を求めて島々を南下しました。ペレは住居として、永遠の炎を燃やすための深い穴が必要です。ニイハウ島、次いでカウアイ島で穴を掘り続けたのですが、すぐに海水が湧き出てくるため、定住することができませんでした。姉が執拗にペレを追いかけまわし、せっかくの住居を水浸しにしたのですね。

次にやって来たオアフ島でも、ペレは大きな穴をいくつも掘りました。こうしてできあがったのが、ダイヤモンドヘッドとパンチボウルの火口。ですがこれらの山は海から近かったので、せっかく掘った穴も、姉の神通力によってまたもや海水で満たされてしまいました。

 

ダウンタウンから眺めたパンチボウル

こうしてオアフ島からモロカイ島、さらにカホオラヴェ島、マウイ島で穴を掘り続けたペレ。最後に降り立ったハワイ島キラウエア火山は海から距離があるので、無事、永遠の炎をキープする穴を掘ることに成功。こうしてペレはキラウエア火山ハレマウマウ火口に定着し、今に至っているというわけです。

…つまりハワイ各島にある火山の多くが、ペレが掘ったものとか。もしもダイヤモンドヘッドやパンチボウルが、もう少し海から遠かったなら。そしてペレの姉の神通力が及ばなかったら。今頃、ペレ一族はオアフ島に住み着いていたことでしょう。ハワイ島に代わりオアフ島が、火山島として世界に知られていたかもしれません。

 

ハワイのランドマーク、ダイヤモンドヘッドにもペレ神話が残る

 

東海岸にもある
ペレゆかりの地

話は前後しますが、オアフ島に住むことを諦めたペレがモロカイ島に飛び立つ前に立ち寄ったとされるのが、東海岸のマカプウ半島。ご存知、巨石「ペレの椅子」です。あちこちで穴を掘り続け、きっとペレは疲れていたのでしょう。崖の上の巨岩に腰かけ、海を眺めていると、海峡の向こうにモロカイ島の島影が見えました。そこでさっそく、海を渡ってモロカイ島に移っていったということです。

(ちなみにこの巨岩、椅子のようにも見えますが横から見た鳥の姿にも見えるため、ハワイ語では「カパリオカモア(鳥の崖)」と呼ばれています)

 

さらに「ペレの椅子」の右側後方にも、もう一つ、ペレ神話にちなんだ有名な山が鎮座しています。ココクレーターがそれ。その古称はコヘレペレぺといいますが、なんとそれは「空飛ぶ女性器」を意味するハワイ語なのです。その由来として、以下のようなユニークな物語が残っています。

 

ペレがハワイ島に定住した後のことです。カラパナ近くをペレが妹カポと一緒に歩いていると、野豚の半神カマプアアが追いかけてきました。下品で女性好きなことで知られるカマプアア。美しいペレに目をつけ、ペレに襲いかかろうとしたから大変です。ペレの妹カポは、姉と同様にパワフルな女神でした。しかも恐ろしい呪術の使い手でもあります。そこでペレを救うため、自分の性器を取りはずすと遠くに力いっぱい投げつけました!

その物体は、ハワイ島から遠く離れたオアフ島に着地。カポの思惑通り、下品で女好きなカマプアアが空飛ぶ物体を追いかけ、オアフ島に飛んで行ったので、その隙にペレとカポは無事、逃げることができたということです。それが一般にココクレーターとして知られる、あの山なのですね。

 

ペレの椅子とココクレーター

ココクレーターには美しいプルメリアの林で知られる植物園や馬の厩舎などがあるので、私もちょくちょく出かけますが…。そこにペレ&カポにちなむこんな逸話が残るとは、ちょっと意外でした。

以上のように、ハワイ島に限らずオアフ島でも各地に軌跡を残している女神ペレ。ホノルルで暮らす私も、ダイヤモンドヘッドやパンチボウル、ココクレーターなどを見上げるたび、スケールが大きな物語を紡いだ大昔のハワイアンの創造性に、圧倒される思いです。皆さんが次回、ダイヤモンドヘッドやパンチボウルに出かける際にも、ぜひ女神ペレに思いを馳せてみてくださいね。そして、一刻も早くマウナロア火山が落ち着くことを祈っています。女神ペレのお怒りが解けますように…。

 


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森出じゅん/JUN MORIDE プロフィール

オアフ島ホノルル在住。横浜出身。青山学院大学法学部卒業後、新聞・雑誌・広告のライターとして活動。1990年、ハワイ移住。フリーランスのジャーナリストとして活動するかたわら、ハワイの文化や歴史、神話・伝説、民間伝承を研究中。単に「美しいハワイ」にとどまらないハワイの奥深い魅力、真の姿を日本に発信すべく、執筆を続ける。2012年からハワイ州観光局の文化啓蒙プログラム「アロハプログラム」講師。著書に「ミステリアスハワイ」(ソニーマガジンズ刊)、「ハワイの不思議なお話」(文踊社刊)、「やさしくひも解くハワイ神話」(フィルムアート社)、「Hawaii 神秘の物語と楽園の絶景ーハワイの人々が愛する100の神話」(パイインターナショナル刊)がある。

☆ブログ「森出じゅんのハワイ生活」>>

☆ハワイ州観光局アロハプログラム>>

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