島の神秘がつまったカウアイ島ワイルク川流域
ハワイの歴史・文化に詳しいライター・森出じゅんさんのコラム。第51回は、ハワイ主要八島で最古のカウアイ島、「ワイルア川」についてお届けします。
更新日:2026.06.17
「偉大で神聖なワイルア」
その古称のわけは?ALOHA! ホノルル在住の森出じゅんです。
ハワイ文化に焦点を当て、ちょっと意外なハワイの横顔を紹介するこのコラム。今回は久々に他島編をお届けします! 先日、実に7年ぶりにカウアイ島を訪れました。ハワイ主要八島で最古のカウアイ島は、歴史深いだけでなく神話の宝庫。このたび訪れた場所だけで1年分の連載コラムが書けてしまいそうですが、今回はテーマをワイルア川に絞り、ご紹介していきましょう。
リフエ空港から、車で約15分。ワイルア川はハワイで唯一、操縦可能なエンジン付き船舶が通行できる大きな川です。全長は32キロ。水の豊富な土地に人は集まりますから、ワイルア川周辺にもずいぶん早い時代からハワイアンの村ができました。

カウアイ島には少なくとも1000年以上前にマルケサス諸島からの移住があり(後にはタヒチから)、航海者が最初に上陸したのがワイルク川河口。古来、河口から川に沿って住居やヘイアウ(祭祀場)がたくさん作られていたため、ワイルアは昔、「偉大で神聖なワイルア(ワイルアヌイアホーアノ)」と呼ばれていたほどです。
女神ヒイアカやヒナ神話…。
数々の神話が残るワイルア川河口またワイルア川河口は、多くの神話や伝説にも登場しています。たとえば火山の女神ペレの妹、ヒイアカがペレの想い人を迎えにカウアイ島にやって来た時、上陸したのがここ。さらに有名な航海士モイケハがタヒチからカウアイ島にやって来た時、最初に降りたったのもこの地とか。モイケハは後に首長の王女を娶り、島の首長となりました。

島の上陸地点だったワイルア川河口
ワイルア川河口は、カウアイ島で初めてヤシの木が出現した場所としても知られています。女神ヒナは当時タヒチに住んでいましたが、ワイルアの海でハンサムな男性とサーフィンを楽しむ夢を見ました。そのため兄に、タヒチに連れて行ってくれるよう懇願。兄はカヌーに変化(へんげ)すると、ヒナを乗せてワイルアへ。ヒナは夢で見た男性を見つけ、その妻になりました。
一方、兄の変化であるカヌーは、河口の砂地に打ちつけられるやいなやスクッと直立。今度はヤシに変化したとか。それこそがカウアイ島初のヤシの木だったそうです(兄がヤシに変化した理由として、兄はもともとヤシの化身だった…という説があります)。
駆け込み寺のような
地域でもあった河口周辺神話世界を離れ、人間の世界でも河口一帯は大変な聖地でした。いくつかのヘイアウも建てられ、リドゲート州立公園内に残されているヒキナアカラーヘイアウもその一つ。伝承によれば、ヘイアウは朝日がカウアイ島で最初に照らす位置にあり、紀元1300年頃、土地の首長により建てられたとか。夜明けの儀式や太陽にまつわる儀式の場だったそうです。

河口一帯はまた、ホナウナウと呼ばれる特別な聖域でもありました。大昔のハワイにはさまざまな掟があり、その罰則の多くが死罪という厳しいもの。一方で、そこに逃げこんで儀式を受ければ罪が赦されるという、避難所のような地域(ホナウナウ)が設けられていました。ワイルア川河口もその一つ。聖域の中核をなすのが、ヒキナアカラーヘイアウでした。
以上のような理由から、二重にも三重にも神聖な土地とみなされてきたワイルア川河口。アクセスしやすい公園内にありますので、ぜひ訪れていただきたいと思います。
究極のカルチャー体験!
ワイルア川クルーズ今回の訪問では、初めてワイルア川のクルーズも楽しみました。ワイルア川州立公園のマリーナから約20分をかけて川を上り、熱帯雨林を歩いて「シダの洞窟」へ。一般には観光的なクルーズと思われていますが、とんでもない! 私にとっては夢のようなカルチャー体験でした。美しい風景を眺めながら、ガイドさんが川周辺の歴史や伝説をず~っと語ってくれるのです。

スミスファミリーは1946年からクルーズを遂行している
たとえば、この川沿いはハウの花が初めてハワイに出現したスポットとか。ある男性が女神ポリアフと恋に落ち、求婚。ですがポリアフが出した条件を全うできなかったため、花に変えられてしまいました。男の名は、ヒヒアカララハウ。その最後の2文字を取って、花はハウと名づけられたということです。ちなみにワイルア川沿岸には、ハウの林が続いています。

クルーズの最後では熱帯雨林を5分ほど歩き、シダの洞窟へ。洞窟はハワイ語で「マーアマアクアロノ」。四大神のロノにゆかりの聖地であるとともに、タパ布(木の皮から作る不織布)作りの名手だったスーパーナチュラルな女性が住んでいたいう伝説の地です。土砂崩れの恐れがあるため今では以前のように洞窟に入れませんが、洞窟を間近に楽しみながら生演奏とフラのパフォーマンスを楽しみました。

クルーズの帰路は船上でハワイアン音楽とフラが続き、1時間強のカルチャークルーズが終了。まさにワイルア川の魅力を体感したこのクルーズ、想像よりもずっと素晴らしく、ぜひまた出かけたいと思っています。皆さんもぜひどうぞ!
梅田・阪急百貨店のセミナーのお知らせ
最後に、日本のワークショップのお知らせです。この7月、大阪・梅田の阪急百貨店本店で開催されるハワイフェアに参加することになりました! 日本最大規模のハワイフェアと称されるこのフェアは2週間にわたって開かれますが、私は7月3日~6日、4回のセミナーをさせていただきます。
セミナーのテーマは2つ。5月12日に発売された新刊、「植物でめぐるハワイの神話―楽園の草花と木々に宿る45のおはなし」(イカロス出版)を軸に、「ハワイの女神にまつわる植物の神話」「ハワイのマジカルな植物の伝説」の2種のセミナーを行います。すでに申し込みがスタートしていますので、詳しい日時などはハワイフェアのウェブサイトをご覧くださいね。
合わせて、以下の書籍もよろしくお願いいたします。今回ふれたヤシやハウの花、航海士モイケハの神話は、「植物でめぐるハワイの神話」に収録されています。
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ハワイカルチャーさんぽ
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Hawaii 神秘の物語と楽園の絶景
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やさしくひも解くハワイ神話
「植物でめぐるハワイの神話」は2026年5月に発売されたばかり。「ハワイカルチャーさんぽ」は2024年に発売。「やさしくひも解くハワイ神話」は現在4刷目、「Hawaii 神秘の物語と楽園の絶景」は2刷目が売り切れ間近となっています。
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森出じゅん/JUN MORIDE プロフィール
- オアフ島ホノルル在住。横浜出身。青山学院大学法学部卒業後、新聞・雑誌・広告のライターとして活動。1990年、ハワイ移住。フリーランスのジャーナリストとして活動するかたわら、ハワイの文化や歴史、神話・伝説、民間伝承を研究中。単に「美しいハワイ」にとどまらないハワイの奥深い魅力、真の姿を日本に発信すべく、執筆を続ける。2012年からハワイ州観光局の文化啓蒙プログラム「アロハプログラム」講師。著書に「ミステリアスハワイ」(ソニーマガジンズ刊)、「ハワイの不思議なお話」(文踊社刊)、「やさしくひも解くハワイ神話」(フィルムアート社)、「Hawaii 神秘の物語と楽園の絶景ーハワイの人々が愛する100の神話」(パイインターナショナル刊)がある。
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