ハナウマ湾にまつわる「昔話」

ハナウマ湾にまつわる「昔話」

ハワイの歴史・文化に詳しいライター・森出じゅんさんのコラム第33回。今回はオアフ島東南部の人気観光スポット、ハナウマ湾についてのお話です。

公開日:2023.05.31

森出じゅんのハワイ歴史&神話散歩

1000年の歴史を持つ海辺。
王族専用の漁場だった時代も

Aloha! ホノルル在住の森出じゅんです。

ハワイ文化に焦点を当て、ちょっと意外なハワイの横顔を紹介するこのコラム、今回は、オアフ島ハナウマ湾がテーマです。見事な珊瑚礁で知られるハナウマ湾は、オアフ島指折りの観光スポット。ですがこの海に魅了されたのは、なにも昨今の観光客だけではありません。かつては王族のお気に入りスポットでもあり、さらには神話の舞台でもある古い土地なのですよね。以下、ハナウマ湾の過去をひも解きながら、その知られざる横顔を紹介していきましょう。

火口が海に沈みこみ、ハナウマ湾が形成されたのは3万2000年以上も昔。ハナウマ湾と人の関わりを見ていくと、約1000年前から、ハワイアンがこの地を訪れていたことがわかっています。水源がないため海辺に集落こそできなかったものの、一帯では魚の神に捧げられた祭壇やペトログリフ(岩に刻まれたハワイの絵文字)などの史跡も発見されており、ハワイアンがハナウマ湾を2つの目的で利用していたことが明らかになっています。

1つは、漁場としての利用。昔も今も魚が潤沢なハナウマ湾は、(資源保護の一環として)王族専用の漁場だった時代もあるほどです。中でもカメハメハ大王の孫にあたるカメハメハ5世は、ハナウマ湾が大のお気に入りだったとか。ハナウマ湾と王族の関係は実に深く、1848年にはカメハメハ大王の娘カママル王女の所有地となり、1883年にはカメハメハの曾孫、パウアヒ王女の手に渡っています。

学習センターの展示より

さらにハナウマ湾は、他島、特にモロカイ島へのカヌーの出発地点としても重要な役割を担っていました。オアフ島からモロカイ島への距離は、およそ43キロ。ハナウマ湾のあるオアフ島東海岸はモロカイ島に面しており、晴れた日にはモロカイ島の島影が見えるほどです。昔のハワイアンは波の静かなハナウマ湾でカヌーを休ませながら、オアフ島ーモロカイ島間に広がるカイヴィ海峡へと漕ぎ出るベストなタイミングを待ったそうです。

船出を待つ間、ハワイアンは海に向かって右手後方にあるココヘッド山頂から、波の状態や風の向きを観察したとか。ハナウマ湾の背後の丘には臨時の避難所として使われたらしい洞窟も残っており、釣り道具などの遺物が見つかっています。

ココヘッド山頂から沖を望む

大とかげモオの娘にまつわる
悲しい神話の舞台

なお「神話や伝説は、風光明媚かつ歴史ある土地から生まれる」というのは、日頃私の信じるところなのですが…...。ご多分にもれず、ハナウマ湾にも大とかげの半神(モオ)の娘にまつわる以下の悲しい神話が伝わっています。

昔々、この浜にそれは美しい娘が住んでいました。娘は一帯の守り神であるモオの愛娘。かねてから若い酋長2人に求婚されていたため、ある日娘は「2人のうちウマの勝者と結婚します」と宣言したのです。ウマとは、腕相撲によく似た古代ハワイのゲームのこと。酋長2人は娘の愛を勝ち取るため、さっそく勝負を始めましたが、なかなか決着がつきません。夕暮れ時になってもまだ歯を食いしばり、腕を組み続ける2人を前になんとも辛くなった娘は、空を見上げてそっと神に祈りました。

「神よ、どうか私をこの海を見下ろす丘に変えてください。2人が平等に、いつも私の姿を眺められるように…...」

神は娘の願いを聞き入れ、娘を湾の背後の丘に変えてやりました。それを嘆いた父親の大とかげも、自ら丘に変化(へんげ)したとか。つまりハナウマ湾を取りまく小高い丘は、父娘の似姿というわけです。確かにその丘を眺めてみれば、大きなとかげの姿にも見えてきますね。

 

地名の由来になったのは
神話? 史実? 地名?

ちなみにハナウマ湾という地名の意味合いには二説あり、一つはこの神話にちなむもので「ウマの湾」(ハワイ語でハナは「湾」の意)。もっとも地名の由来になったウマの勝負は神話にまつわるものではなく、19世紀の歴史的イベントで展開されたウマだとの説もあります。カメハメハ大王の妻の一人だったカアフマヌ妃が、この地を訪れた時のこと。地域の人々はカアフマヌ妃を大歓迎し、余興にフラやウマを披露して王妃をもてなしたそうです。歓待の宴は1か月も続き、以来この土地は「ウマの湾」と呼ばれるようになったとか。

もう一つは、「湾曲した湾」を意味するという説です(ウマには「湾曲した」という意味もあります)。こちらはハナウマ湾の半円状の地形にちなんだ命名です。あなたはどちらを支持しますか?

以上のように、さまざまな意味で古来、特別な地域だったハナウマ湾。ハナウマ湾のチケット売場の先には、こういったハナウマ湾の移り変わりや貴重な海洋資源が学べる学習センターも設置され、見応えがあります。告白しますと、実は以上書いてきた歴史的な情報の多くは、学習センターに展示されていた内容でもあります。チケット売場を抜けたとたん、つい美しい海へと気持ちが急いてしまいますが、学びがいっぱいのこの学習センター、素通りしてしまうのはもったいないほどの充実度。ぜひゆっくり見学してみてくださいね。

 

ハナウマ湾をおとずれるなら
300枚の当日券が狙い目

さて、これは余談というかおまけの情報になりますが…...。オンラインでの予約制度が始まって以来、ハナウマ湾訪問が叶わなかったという旅行者の声をよく聞きます。ハワイ在住者は9時まで予約なしで入場できるのですが、私も日本からやってくる家族や友人のため予約を試みたところ、3度ほど撃沈しています。ですがハナウマ湾では、毎日300枚の一般向け当日券(ウォーク・イン・チケット)を用意しているのをご存知でしょうか?

今回じっくりスタッフに聞いたところ、7時半までに駆けつければ、当日券を確保できる可能性が高いとのこと(ただし駐車場へのゲートオープンは6時45分)。実際、今回ハナウマ湾を訪れたのは土曜日でしたが、朝9時の時点で当日券がまだ残っていました。チケット売場手前の青いパラソルが、知る人ぞ知る当日券の配布所。この夏のハワイでハナウマ湾を目指す方も多いかと思いますが、「早起きは三文の徳」の精神で、早朝からハナウマ湾を訪れてみてくださいね。

 


 

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森出じゅん/JUN MORIDE プロフィール

オアフ島ホノルル在住。横浜出身。青山学院大学法学部卒業後、新聞・雑誌・広告のライターとして活動。1990年、ハワイ移住。フリーランスのジャーナリストとして活動するかたわら、ハワイの文化や歴史、神話・伝説、民間伝承を研究中。単に「美しいハワイ」にとどまらないハワイの奥深い魅力、真の姿を日本に発信すべく、執筆を続ける。2012年からハワイ州観光局の文化啓蒙プログラム「アロハプログラム」講師。著書に「ミステリアスハワイ」(ソニーマガジンズ刊)、「ハワイの不思議なお話」(文踊社刊)、「やさしくひも解くハワイ神話」(フィルムアート社)、「Hawaii 神秘の物語と楽園の絶景ーハワイの人々が愛する100の神話」(パイインターナショナル刊)がある。

☆ブログ「森出じゅんのハワイ生活」>>

☆ハワイ州観光局アロハプログラム>>

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