リリウオカラニ女王の終の棲家、ワシントンプレイス

リリウオカラニ女王の終の棲家、ワシントンプレイス

ハワイの歴史・文化に詳しいライター・森出じゅんさんのコラム第12回。オアフ島ダウンタウンにあるリリウオカラニ女王の終の棲家「ワシントンプレイス」にまつわるお話です。

公開日:2019.07.03

森出じゅんのハワイ歴史&神話散歩

イオラニ宮殿を追われた
リリウオカラニが暮らした館

ALOHA! ホノルル在住の森出じゅんです。

ハワイ文化に焦点を当て、ちょっと意外なハワイの横顔を紹介するこのコラム。前回はハワイ王国最後の女王、リリウオカラニの銅像(ホノルル・ダウンタウン)をご紹介しました。そして今回はリリウオカラニ女王「ゆかりの地」の第2弾! リリウオカラニが最後に暮らした館、ワシントンプレイスについてお話しましょう。

兄王カラカウアの跡を継いだものの、2年後の1893年、親米派の白人勢力によって王国が倒され、リリウオカラニが退位したことは前回お話ししました。それではその後、リリウオカラニはいったいどうなったのでしょうか?…実は宮殿を追われたリリウオカラニが暮らしたのが、このワシントンプレイスなのです。

イオラニ宮殿やリリウオカラニ女王像から徒歩1、2分のワシントンプレイス
 

まずはワシントンプレイスについて、簡単にご紹介しましょう。その館は元々、リリウオカラニの夫であるジョン・ドミニスの実家として、1847年に建てられたものです。ジョン・ドミニスはNY生まれですが、子ども時代にハワイに引っ越し。リリウオカラニとは幼馴染みでした。当時のホノルルはまだまだ未開の地で、大きな建物がほぼない時代でした。

そんななか、ギリシャ復古調の白亜の豪邸、ワシントンプレイスが完成した時は、皆、目を見張ったそう。ワイキキからダウンタウンまで見渡す限りの平原が広がり、なんとワイキキからワシントンプレイスが見えたというから驚きです。ワイキキからは車でも15分はかかる距離ですから、その頃のホノルルの様子がよくわかりますね。

リリウオカラニ愛用のピアノや、お気に入りの椅子も残る
 

しかもその完成時、9歳だったリリウオカラニや後のカメハメハ5世も、学校の遠足でワシントンプレイスを訪れたとか。ハワイ王族にとっても、それだけ豪奢な屋敷だったのでしょう。

傷心のリリウオカラニを慰めた、
「本当に宮殿のような住まい」

リリウオカラニはその15年後、24歳でジョン・ドミニスと結ばれ、ワシントンプレイスにお嫁入り。そして1893年にハワイ王国が倒れた後、すでに義母&夫は亡くなっていたものの、リリウオカラニが終の棲家として選んだのがこのワシントンプレイスなのでした。

1階入口の付近にある居間
 

ちなみにワシントンプレイスはイオラニ宮殿のちょうど裏手にあり、200メートルほど離れているでしょうか。ワシントンプレイスからは宮殿がよ~く見えるのです。王座を追われた後、宮殿を日々目にしながらの生活は辛いものがあったのでは? と心配になりますが、リリウオカラニはワシントンプレイスでの生活をかなり気に入っていた様子。その自叙伝中、ワシントンプレイスについて以下のように記しています。

「…本当に宮殿のような住まいで、外観が魅惑的なのと同じく内部の調度も心地よい」

国を奪われるという悲惨な状態にあった中、せめてリリウオカラニがワシントンプレイスを愛していたという事実に、何だか救われるような気がします。

ワシントンプレイスの庭でくつろぐリリウオカラニ(Photo Courtesy of Hawaii State Archives)

毎週木曜日のツアーで
非公開だった2階の見学が可能に!

リリウオカラニがこの美しい館で死去したのは、1917年11月のこと(享年79歳)。その死後、ワシントンプレイスは甥のクヒオ王子の手を経て売却され、1922年からハワイ州知事公邸となりました。ですが2002年、敷地内に別棟の新公邸が完成し、今では博物館として公開中。予約制のツアー(毎週木曜日10時から)に参加する形で、見学が可能です。

ここ数年は改装工事が続いてツアーが中止となっていましたが、ようやく昨年からツアーが再開。しかも非公開だった2階部分がギャラリーとして公開されるようになったのも嬉しい限りです。そんなわけで私も先日久しぶりに訪れ、リリウオカラニの寝室やコアウッド製の美しいピアノ、いつも座っていたお気に入りの椅子といった女王愛用の品々を見てきたところです。

ギャラリーとして新公開されている2階部分
 

ツアーは基本的に英語ですが、日によってはその前後に日本語ツアーもリクエストできることがあるので、問い合わせてみてくださいね。そしてもし内部を観る時間がないという方も、とりあえず訪問してみましょう。庭にはリリウオカラニ作詞・作曲の名曲「アロハ・オエ」の記念碑があり、柵の外からも見ることができます。ハワイ語&英語でその歌詞が刻まれた記念碑は、ハワイアン音楽ファンなら一見の価値ありですよ~。徒歩1、2分のイオラニ宮殿見学と合わせて、ぜひワシントンプレイスを訪れていただきたいと思います。

名曲「アロハ・オエ」の記念碑
 

さて、ここで一つお知らせがあります。前回ちらりと予告したリリウオカラニを学ぶセミナーが、9月に実現することになりました! 長年温めていた企画である王族シリーズ第1弾として、9月10日(火)、横浜「ハワイ最後の女王、リリウオカラニの真実」セミナーを開催します。主催はフラ&ハワイの専門誌「フラレア」。セミナーの詳細は下記リンクよりご確認ください。

ちなみに主催のフラレアは、私の2冊目の書籍「ハワイの不思議なお話」の出版元になります。ぜひ!横浜でお会いしましょう。お待ちしております~。


 

森出じゅんさんの著書「ハワイの不思議なお話〜ミステリアスハワイ」。

歴史や神話、伝承、スピリチュアルな世界まで、ハワイの知られざる一面を、独自の調査・研究に基づき、じゅんさんならではの視点で紹介した一冊です。読めば、ハワイに描くイメージが変わるかも? ディープなハワイを知りたい方は、必読ですよ〜!

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森出じゅん/JUN MORIDE プロフィール

オアフ島ホノルル在住。横浜出身。青山学院大学法学部卒業後、新聞・雑誌・広告のライターとして活動。1990年、ハワイ移住。フリーランスのジャーナリストとして活動するかたわら、ハワイの文化や歴史、神話・伝説、民間伝承を研究中。単に「美しいハワイ」にとどまらないハワイの奥深い魅力、真の姿を日本に発信すべく、執筆を続ける。2012年からハワイ州観光局の文化啓蒙プログラム「アロハプログラム」講師。著書に「ミステリアスハワイ」(ソニーマガジンズ刊)、「ハワイの不思議なお話」(文踊社刊)、「やさしくひも解くハワイ神話」(フィルムアート社)、「Hawaii 神秘の物語と楽園の絶景ーハワイの人々が愛する100の神話」(パイインターナショナル刊)がある。

☆ブログ「森出じゅんのハワイ生活」>>

☆ハワイ州観光局アロハプログラム>>

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