
ハワイの象徴、ダイヤモンドヘッドの過去
ハワイの歴史・文化に詳しいライター・森出じゅんさんのコラム第46回。今回はオアフ島のランドマーク、ダイヤモンドヘッドの過去についてお届けします。
更新日:2025.08.29
火山の女神ペレ一族が
創造&命名にまつわる山ALOHA! ホノルル在住の森出じゅんです。
ハワイ文化に焦点を当て、ちょっと意外なハワイの横顔を紹介するこのコラム。今回はオアフ島のランドマーク、ダイヤモンドヘッドをテーマにお届けします。今ではすっかり人気のハイキングスポットとして知られていますが、ハワイアンにとってダイヤモンドヘッドは古来、神の存在を感じさせる神秘の山。その昔、神殿がいくつもあったこともわかっています。
そもそも山の成り立ちについても、壮大な神の物語が残ります。第30回「オアフ島にもある女神ペレ神話の舞台」でも触れたとおり、ダイヤモンドヘッドを創造したのは、火山の女神ペレとか。
火山の女神ペレ(ハワイ島パホアの壁画より)
その夫を誘惑して海と海水の女神である姉を怒らせ、タヒチを追われる形でハワイに移ったペレ。住居となる深い穴をあちこちで掘りましたが、姉の妨害によりクレーターからすぐ海水が湧き出してくるため、各地を転々とすることになりました。ハワイ各島にある火山の火口はその際ペレが創ったもの。ダイヤモンドヘッドもその1つです。
またダイヤモンドヘッドのハワイ語名「レアヒ」は、ペレの妹である女神ヒイアカの命名。ヒイアカがペレの想い人を迎えにハワイ島からカウアイ島に赴く途中、ワイキキにも立ち寄った時のこと。横から見たダイヤモンドヘッド山頂がアヒ(マグロ)の額に似ていたため、レアヒと呼ばれるようになりました。アヒの額はハワイ語で「ラエ・アヒ」ですが、それが訛ってレアヒになったそうです。
レアヒの意味合いとしてはもう1つ、「炎の渦巻き」というのもあります。こちらは昔、沖合のカヌーへのシグナルとして、山頂でかがり火が燃やされていたことからの命名です。
…ここまで読み、もしかしたら「ダイヤモンドヘッドのハワイ語名は、カイマナヒラでは?」と思った人がいるかもしれません。「♪カイマナヒラ」というダイヤモンドヘッドを謳った名曲は、日本でもお馴染みですよね。ですが実はカイマナヒラとは、単にDiamond Headをハワイ語の発音とスペルに置き換えたもの(たとえばハワイ語にDはないため、代わりにKがあてられます)。
そしてダイヤモンドヘッドという名称そのものも、あるイギリス人船員の勘違いからつけられたことはあまりにも有名ですね。ここでキラキラ光る方解石を見てダイヤモンドと勘違いしたという19世紀の船員も、山が今もダイヤモンドヘッドと呼ばれているのを知ったら驚くのではないでしょうか?
カメハメハ大王が戦勝祈願した
戦いの神の神殿もここにさてダイヤモンドヘッドといえば直径1キロもあるクレーターが印象的ですが、広大なクレーターは約30万年前、ただ一度の大規模噴火で形成されたもの。古来、山の頂きは神々の領域とみなされてきたハワイ。ダイヤモンドヘッドももちろん聖域であり、さまざまな宗教儀式の場となってきました。クレーター内の崖の洞窟が、埋葬場として使われたという人もいます。
Photo Courtesy of Hawaii Tourism Authority(HTA)/Kuni Nakai
ホノルルのビショップ博物館の調査により、ダイヤモンドヘッド周辺にいくつかの神殿があったこともわかっています。たとえば山頂に建っていたのが、風の神を祀るアヒ神殿。海側の麓、今ではダイヤモンドヘッド灯台が建つ地点には漁業の神のためのマカフナ神殿があり、カピオラニ公園近くの麓には、大型のパパエナエナ神殿がありました。
ダイヤモンドヘッド灯台近くにかつて、マカフナ神殿があった
Photo Courtesy of Hawaii Tourism Authority(HTA)パパエナエナ神殿は別名、レアヒ神殿。サーフィンにまつわる神殿であると同時に、戦いの神クーを祀り、多くの人身御供が捧げられた神殿でもあります。かのカメハメハ大王がオアフ島を征服した1795年、オアフ島を支配していた首長をここで生贄に捧げたほか、カメハメハがカウアイ島制圧に乗り出した1804年、神殿で戦勝祈願をしたとの話も残っています。
アメリカ陸軍の旧施設が
今なお山頂付近に点在それから約半世紀後。ハワイ王国時代に王族間で島の土地が分割されると、ダイヤモンドヘッドと周辺の土地は、後に王国6代目の君主となるルナリロ王の所有地となりました。ハワイがアメリカ準州となってからは準州政府経由でアメリカ陸軍に渡り、軍事利用がスタートします。
トレイルの中間地点には、クレーターの底からさまざまな建築機材を吊り上げた機械が残されている
1908年にはオアフ島沿岸警備のため小型の要塞が山頂に配置されたほか、山頂に続くトレイルも建設。海に向かって砲台も置かれましたが、実際にそれらが火を吹いたことはなかったようです。
こういった軍事施設の名残は今なお山頂付近に点在していますので、トレイルの途中で探してみましょう。かつてかがり火や神殿があったという聖なるクレーターの縁に軍の施設が設置されているのを見ると、少々複雑な気持ちになりますが…。
クレーター縁には今も要塞跡が残る
以上のようにハイキングにとどまらず、思いがけず歴史散歩まで楽しめてしまうダイヤモンドヘッド。自然美や頂上からの絶景に加え、山を取りまくディープな過去を体感するつもりで、ぜひ訪問してみてはいかがでしょうか? 登頂は現在、予約制となっていますので、公式サイトで詳細を確認のうえお出かけくださいね。
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森出じゅん/JUN MORIDE プロフィール
- オアフ島ホノルル在住。横浜出身。青山学院大学法学部卒業後、新聞・雑誌・広告のライターとして活動。1990年、ハワイ移住。フリーランスのジャーナリストとして活動するかたわら、ハワイの文化や歴史、神話・伝説、民間伝承を研究中。単に「美しいハワイ」にとどまらないハワイの奥深い魅力、真の姿を日本に発信すべく、執筆を続ける。2012年からハワイ州観光局の文化啓蒙プログラム「アロハプログラム」講師。著書に「ミステリアスハワイ」(ソニーマガジンズ刊)、「ハワイの不思議なお話」(文踊社刊)、「やさしくひも解くハワイ神話」(フィルムアート社)、「Hawaii 神秘の物語と楽園の絶景ーハワイの人々が愛する100の神話」(パイインターナショナル刊)がある。
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