世界に知られる衝撃事件の舞台、ハワイ島ケアラケクア湾

世界に知られる衝撃事件の舞台、ハワイ島ケアラケクア湾

ハワイの歴史・文化に詳しいライター・森出じゅんさんのコラム第23回。今回は、ハワイ島コナ沿岸のケアラケクア湾に関するお話です。

公開日:2021.08.27

森出じゅんのハワイ歴史&神話散歩

美しくも悲しい「神の道」で
起きた2つの出来事

ALOHA! ホノルル在住の森出じゅんです。

ハワイ文化に焦点を当て、ちょっと意外なハワイの横顔を紹介するこのコラム。今回は、ハワイ島コナ沿岸のケアラケクア湾をご紹介します。「ケアラケクア湾? あまり聞き覚えのない地名だな」と思う方もいるかもしれませんが、実はこの地こそは、イギリスの航海家、ジェームズ・クック船長落命の地。

クック船長はハワイアンとの小競り合いの末に殺害されたのですが、そのきっかけになったのが、ケアラケクア湾に残る神話にちなんだ悲しい誤解でした。つまりケアラケクア湾は、神話と歴史が濃厚に絡みあう、実に重要なスポット。以下、同地の神話からお話ししていきましょう。

ジェームズ・クック船長(Photo Courtesy of Hawaii State Archives)

昔々、ケアラケクア湾の畔で、ハワイ四大神の1人で豊穣と平和の神、ロノが妻と幸せに暮らしていました。ところがロノの美しい妻に、近隣の酋長が横恋慕。ロノは2人の仲を疑い、妻を殺してしまったのです。

ですが死の直前の妻の嘆きを聞いて、妻が無実だったことを悟ったロノ。自分の行いを激しく後悔し、「いつか必ず、この海に帰ってくる」と言い残して、ケアラケクア湾を去っていったそうです。そのため、この海はケアラケクア(神の道)と名づけられました。

「神の道」ケアラケクア湾

 

イギリスの航海家、
それともロノ神の再来?

そして、時は移って1779年1月。ケアラケクア湾に英国のクック船長の帆船、レゾルーション号がやって来ました。実はハワイの人々が西洋人&船を見たのは、その時が初めて。その際、ハワイの人々は、クック船長の到来をロノ神の帰還と勘違いしてしまったのです。

それは、恐ろしいほどの偶然がいくつも重なった結果でした。まずレゾルーション号が現れたのが、奇しくもロノを祀る祭典であるマカヒキの真っ最中だったこと。そして帆船の帆が、ロノの象徴である白い旗と酷似していたこともあります。しかも言い伝えではロノが白い肌を持つとされたことも、クック船長をロノと見誤った大きな理由となりました。

そのためハワイアンは、島をあげてクック船長一行を大歓迎。一行が岸に着くと首長一族と神官が丁重に出迎え、山のようなご馳走でもてなしたそうです。

ところが。一度は旅立って行ったクック船長の船が嵐に遭って損傷し、戻ってきた時、ハワイアンは気がついたのですね。「神の船が壊れるはずがない」「この男は、ロノではないのだ」と…。

最終的には、ハワイアンがレゾルーション号からボートを盗んだ事件をきっかけに、小競り合いが勃発。怒れるハワイアンによってクック船長の命が奪われるという不幸な結末となりました。

クック船長も、最初から自分が神ではないことを告げていればよかったものを…。船には通訳として(ハワイアンと極めて似た言葉を話す)タヒチ人が同行していましたから、ハワイアンの誤解を知りながら究極のもてなしを享受したクック船長にも、非があるのは確かでしょう。

イルカの出没率も高いケアラケクア湾

 

クック船長を迎える
儀式を行った神殿も残る

さて、このケアラケクア湾はシュノーケリングのメッカであり、時にはイルカの群れも見られる絶景の地。一帯は州立歴史公園として整備されており、アクティブ派もカルチャー派も、一緒に楽しめるスポットです。次回のハワイ島訪問時は、ぜひ家族連れで訪れていただきたい風光明媚な地がここ。

歴史的な見所としては、まず公園入口と反対側になる対岸に、クック絶命の地を示す記念碑があります。対岸に渡るにはボートが必要ですが、肉眼でもなんとか見えますので、目を凝らしてみてください! 公園の入口側にはまた、豊穣の神ロノのための神殿、ヒキアウ神殿も。ハワイアンはこの神殿で、ロノの再来と信じたクック船長をうやうやしく迎え、厳かな儀式を司ったそうです。

対岸に見えるクック船長の記念碑

クック船長を迎えて儀式が行われたヒキアウ神殿

この時、ハワイ島の大酋長カラニオプウ(カメハメハ大王の伯父)からクック船長に、素晴らしい羽毛のマントが贈られたとか。大変な手間をかけて作られる羽毛のマントやレイは、古代ハワイでは王族だけが身に着けられた価値の高いもの。カラニオプウはクック船長を神と信じて、自らのマントを贈ったのですね。

クック船長のマントは巡り巡ってニュージーランドの博物館に残されていましたが、今ではホノルルのビショップ博物館に寄贈され、展示されています。因縁のマントを見に、ぜひビショップ博物館も訪問いただきたいと思います。

このケアラケクア湾については、7月に発売された新刊「Hawaii 神秘の物語と楽園の絶景―ハワイの人々が愛する100の神話」でも、カラー写真とともに紹介しております。また昨年発売された「やさしくひも解くハワイ神話」でも、ロノの神話やクック船長の功罪について詳しく書いていますので、手にとっていただければ幸いです。どうぞよろしくお願いいたします!

セミナーのお知らせ

なお、最後にお知らせがあります。近い将来、ハワイ神話にまつわるオンラインセミナ―を個人で始めたいナと思っています! これまでハワイ州観光局主宰のオンラインセミナーはやって来ましたが、個人での開催は初挑戦となります。

スタートの際はブログでアナウンスしますので、たまにブログを覗いてみてくださいね。ブログのリンクは、以下のプロフィールを参照ください。

森出じゅん/JUN MORIDE プロフィール

オアフ島ホノルル在住。横浜出身。青山学院大学法学部卒業後、新聞・雑誌・広告のライターとして活動。1990年、ハワイ移住。フリーランスのジャーナリストとして活動するかたわら、ハワイの文化や歴史、神話・伝説、民間伝承を研究中。単に「美しいハワイ」にとどまらないハワイの奥深い魅力、真の姿を日本に発信すべく、執筆を続ける。2012年からハワイ州観光局の文化啓蒙プログラム「アロハプログラム」講師。著書に「ミステリアスハワイ」(ソニーマガジンズ刊)、「ハワイの不思議なお話」(文踊社刊)、「やさしくひも解くハワイ神話」(フィルムアート社)、「Hawaii 神秘の物語と楽園の絶景ーハワイの人々が愛する100の神話」(パイインターナショナル刊)がある。

☆ブログ「森出じゅんのハワイ生活」>>

☆ハワイ州観光局アロハプログラム>>

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