ハワイのお宝がいっぱい! ビショップ博物館

ハワイのお宝がいっぱい! ビショップ博物館

ハワイの歴史・文化に詳しいライター・森出じゅんさんのコラム第18回。今回はハワイ王朝の宝物を引き継ぐビショップ博物館にまつわるお話です。

公開日:2020.11.02

森出じゅんのハワイ歴史&神話散歩

ハワイ王朝の宝物を引き継ぐ
ハワイ最大の博物館

ALOHA! ホノルル在住の森出じゅんです。

ハワイ文化に焦点を当て、ちょっと意外なハワイの横顔を紹介するこのコラム。今回ご紹介するのは、私がこよなく愛するハワイ最大の博物館、ビショップ博物館です。通い始めて30年になりますが、今でも行くたびに「ハッ!」と息を呑む新鮮な発見がいっぱい。ハワイ&ポリネシアのコレクションでは世界随一の同博物館、ハワイの歴史や文化に興味のある人には、絶対おすすめの場所です。

同博物館が設立されたのは、ハワイ王国時代の1889年。カメハメハ大王の末裔、パウアヒ王女の夫によって、亡き王女を記念して建てられました。当初はパウアヒ王女が遺した王家の宝物を中心に展示していましたが、1893年のハワイ王国崩壊後はイオラニ宮殿所蔵の遺物や各王族の所蔵物も続々と加わり、今ではハワイに加え太平洋の島々からの収集物も含め、200万点のコレクションを誇ります。

広い敷地内には複数の展示ホールがありますが、見学の目玉となるのは何といってもハワイアンホール。今回はハワイアンホールの見所を中心に、紹介していきましょう。

ハワイアンホールは3階まで吹き抜けになっており、1階は神々がテーマ。火山の女神ペレやハワイ四大神、先祖神、大とかげの姿をした半神などを紹介するコーナーがあり、ハワイの神話世界をビジュアル的に学べるのがこのフロアです。2階は古代ハワイアンの生活をテーマに、工芸品や武器、薬草、フラ&楽器など様々な生活の側面に関する遺物を展示。3階にはカメハメハ大王など君主たち、王子や王女に関する貴重なアイテムが並んでいます。

人々が隠し守った神像や
クック船長のマントもここに

ハワイの過去を神話時代から網羅するハワイアンホールの展示を、細かく列記することはとてもできませんが、入館後にまず目を引くのが大きなティキ像でしょう。実は1819年にカメハメハ大王が死去すると宗教改革が起こり、神殿や神像がことごとく破壊されてしまったハワイ。高さ数メートルもの大きなティキ像は世界に3体しか残っていませんが、うち一つがここに(残りは大英博物館、マサチューセッツ州のピーボディ・エセックス博物館にあります)。

小さめの神像も多数展示されていますが、ぜひそちらも1つ1つ、説明書きを見てみてください。宗教改革時の破壊を逃れるため、神官や庶民が密かに隠したものが多いことがわかります。溶岩トンネルやタロイモ畑の地中深く、洞窟、川底から発見された…などという説明を読むたび、ハワイの複雑な過去に感じ入ってしまいます。

同じく1階にある草葺の家にも、ユニークな逸話が…。この家は単なるレプリカではなく、19世紀に造られたカウアイ島の草葺の家を解体して運び入れ、博物館で組み立てたものなのです。ビショップ博物館がオープンした当時、館長が「本物の草葺の家を後世に残したい」と思い、丸々博物館に移したものとか。今でこそハワイ各地で草葺の家が再現されていますが、それもビショップ博物館にあるハワイ唯一の実物の家のお陰…といえそうです。

さらには同じく1階にある羽毛のマントにも、ぜひ注目を! このマントは何と、1779年、ハワイ島の大酋長カラニオプウ(カメハメハ大王の叔父)からイギリスの航海家、クック船長に贈られたいわくつきのマントなのです。背景を少し説明すると…。当初、ハワイの人々はクックを見て豊穣の神ロノの再来と勘違い(この辺りには深い事情がありますが、詳しくは拙著「やさしくひも解くハワイ神話」をご覧くださーい)。大酋長は自分のマントをクックに贈り、最高の儀礼をもって一行を迎え入れたのでした。

ところが皮肉なことに、クックは後にこの大酋長を拘束。自分の船からハワイアンが盗んだボートを返してもらうための手段だったのですが、クックはそのためにハワイアンの怒りを買い、惨殺されてしまったのです。…そんな歴史的大事件の主人公が関わった遺物を、すぐ目の前で見られるとは! こんな例からも、ビショップ博物館の凄さを少しでも感じていただけたら幸いです。

ハワイの遺物を守る?
毒の神カライパホアの像

冒頭で述べたようにビショップ博物館には30年来通ってきた私ですが、最後に、恥ずかしながら今年初めて知った驚きの事実をご紹介しましょう。まずは下の写真の、天井下にグルリと飾られた小さな神像をご覧ください。実はこれ、古来ハワイで恐れられてきた毒の神、カライパホアの像だそうです。

伝説によれば大昔、カライパホアのスピリットが1本の木に乗り移ったとか。その結果、木は強力な毒を持ち、木の上を飛ぶ鳥は死に、枝が落ちた泉の水を飲んだ動物は死んだと言われます。そんな毒の木で作られた神像はハワイ中で恐れられ…。神像を所有する神官は像を少しづつ削っては政敵を毒殺したり、呪いをかけるのに使ったそうです。

もちろん、ハワイアンホールの天井を飾るのは神像のレプリカなのですが、それでも十分、怖いですよね! しかもなぜ毒の神が天井に飾られているのでしょうか…。ある種の魔除けなのかもしれません。

しかもその毒の神の展示セクションが3階にあることにも、このたび気づきました。さまざまな毒の神の像が並び、中にはカラカウア王やカメハメハ4世夫人のエマ王妃が所蔵していた毒の神の像も。王族までが毒の神の像を手元に置いていたとは、驚きですね。…そんな展示を発見するたび、ハワイ文化の神秘さ、深遠さを実感する私です。

以上のハワイアンホールのほか、ビショップ博物館には太平洋の島々の民族をテーマにしたパシフィックホール(旧ポリネシアンホール)、火山学など太平洋周辺の自然科学が学べるサイエンス・アドベンチャーセンター、期間限定の展示が見られるエキシビジョンホール、ハワイの夜空が学べるプラネタリウム、ハワイの植物を集めた庭園など、見所がたっぷり!

パンデミック下、プラネタリウムは休館中ですが、その他の施設は予約制で公開中です。直前の予約でも案外大丈夫ですので、日本―ハワイの行き来が正常した暁には、ぜひぜひゆっくり訪れてみてくださいね。期間限定の展示としては今、ハワイのサーフィン文化にまつわる「マイ・キノヒ・マイ」が来年3月28日まで、同じく弦楽器の関する「カウラ・ピコ」が1月31日までの予定で公開中(ただし延長の可能性ありだそうです)。ビショップ博物館でお会いしましょう!

こちらの新刊やさしくひも解くハワイ神話も、どうぞよろしくお願いいたします。

森出じゅん/JUN MORIDE プロフィール

オアフ島ホノルル在住。横浜出身。青山学院大学法学部卒業後、新聞・雑誌・広告のライターとして活動。1990年、ハワイ移住。フリーランスのジャーナリストとして活動するかたわら、ハワイの文化や歴史、神話・伝説、民間伝承を研究中。単に「美しいハワイ」にとどまらないハワイの奥深い魅力、真の姿を日本に発信すべく、執筆を続ける。2012年からハワイ州観光局の文化啓蒙プログラム「アロハプログラム」講師。著書に「ミステリアスハワイ」(ソニーマガジンズ刊)、「ハワイの不思議なお話」(文踊社刊)、「やさしくひも解くハワイ神話」(フィルムアート社)、「Hawaii 神秘の物語と楽園の絶景ーハワイの人々が愛する100の神話」(パイインターナショナル刊)がある。

☆ブログ「森出じゅんのハワイ生活」>>

☆ハワイ州観光局アロハプログラム>>

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