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. 実際にお店に来て、思ったこと。1階に和食レストラン「ZIGU」がオープンした時にも書きましたが、2016年1月に公開したZETTON菊地さんのインタビューで、すでにこのパリ・ハワイの構想が語られていました。 その後、店名が「パリ・ハワイ」になると決まり、しかし歴史指定建造物をリノベーションするという特殊さから建築や営業に関する許可がなかなか降りず、プロジェクト自体が難航しているという話も、この2年の間に折りに触れお聞きしました。 そこで私の頭に浮かんできたのは、ヴィム・ヴェンダース監督の映画「パリ、テキサス」。  すみません、ちょっと唐突ですよね。 映画「パリ、テキサス」の原題は「PARIS, TEXAS」。アメリカ合衆国のテキサス州には「パリ(Paris)」という街があるんです。この映画の中にテキサス州パリは登場しませんが(!)、主人公の「約束の地」として物語が進行していきます。自分のルーツがあり、幸せの源泉がある、そんなテキサス州パリを目的地に、死と再生の道のりを歩んでいく…というロードムービーの金字塔。 「and」や「of」を挟まない、「PARIS. HAWAII」。私はこの店名に、暗示的なものを感じざるを得ませんでした。もちろん、勝手な深読みだと分かってはいるのですが。 「本当にたどり着けるのかな…」という不安と、 
 「たどり着いた先に何があるのか、見てみたい」という、期待。 ZETTON, Inc.の名物スタッフ、マイルドさん(右) なので、今回、ZETTON, Inc.のマイルドさんに「2年間お待たせしただけのものを、ご提供します」と言われたとき、真夏のハワイなのに鳥肌が立ちました。 「たどり着いたんだな、約束の地に」と、思いました。 
 その先の景色を見せてくれるんだ、と。しかも自信たっぷりに。そしてそれは、私の想像力をはるかに超えるもので、感動しまくったのは前ページでお伝えしたとおりです。 どこを切り取っても絵になる店内。 
 世界観がまったくブレない、統一感。「あ、あそこちょっと…。ま、しょうがないか、ハワイだし」 そんな手加減を一切加える必要のない、圧倒的な完成度。  器ももちろんこのお店のために…というのは、レアではありますが全くない話でもない。 しかしパリ・ハワイでは、ジェネラルマネージャー自ら陶芸をし、このお店のために作りおろしたというから、その気合いたるやハンパじゃありません。 「パン皿はどうする?」「丸でも四角でもない形がいいね」といった具合に、シェフと相談しながら作っていったそうです。  私、思うんです。 
 たった一人の「才気あふれるスーパーマン」の力では、ここまでのレベルにならなかったのではないか?と。もちろん、「天才的な誰かが手がけるなにか」は素晴らしく、一人だからこそ突き詰められる世界もあるでしょう。 しかし、レストランは、そうじゃないんだな…と、パリ・ハワイに来て実感しました。 
 お店って、チームで作っていくものなんだなと。ZETTONのデザインチームはキレッキレの才能集団ですが、さらにそれを具現化する現場スタッフのこだわりと情熱があればこそ、この唯一無二の世界が完成していると思うんです。 2年間という、決して短くはない期間、気力を維持し、思いを共有し、情熱をぶつけ合ってきたであろうパリ・ハワイのチームには、もう、尊敬しかありません。  パリ・ハワイの顔、山中祐哉シェフは、パリのベストビストロにも輝いた世界的なレストラン「Clown Bar Bistro」でスーシェフとして活躍していた実力の持ち主。 アラカルトが主流なハワイで、たったひとつのコース料理のみで勝負する大胆さも驚きですが、ニッチなハワイ産食材をよくぞここまでというほど研究し尽くしたメニューにも感服。 キッチン内での立ち居振る舞いにも無駄がなく、「スキのなさの塊」のような印象だったのですが…。  調理が終わってみると、この笑顔。 お話してみると、意外にもリラックスした柔らかい人柄で、むっちゃアロハを感じる!(笑)。そんなところも、ZETTONらしくて、妙に納得したのでした。 そしてもうひとつ、私が密かに感動したポイントがありまして。 
 それは、キッチンで見かけた、こちらの方。 圭吾シェフの存在です。 ZETTONがハワイ進出して以来、仕入れからメニュー開発、キッチンでの作業まで、食のクオリティを担保するスーパー料理人。今なお色あせない、現役のレジェンド。 そんな圭吾シェフが、この日パリ・ハワイのキッチンで、華麗に包丁をさばき、静かにスタッフに指示を出し、事の成り行きを見守っていました。「落ち着くまでは手伝ってるんですよ」なんて気軽に言えるそのオールマイティさは、傭兵のような冷めたプロフェッショナリズムを感じさせて、めちゃくちゃカッコ良かったです。 そう、みんなカッコいいんですよ。 
 このお店に携わる人みんな、すごい素敵なんです。憧れるし尊敬するし、と同時にめちゃめちゃ悔しいし嫉妬してます私。フィールドは違えど、働く身として、何かを生み出す仕事に就く者として。 
 そして、ものすごく大きな勇気をもらいました。私もやったるぞー!と、力が湧いてきました。 美味しいだけじゃない、思い出作りだけでもない。 このお店を訪れた誰もが、心を揺さぶられ、何かに気づいたり、振り返ったり、気持ちを奮い立たせたり。そんな「きっかけ」を与えてくれる場所。 少なくとも、私はそう感じました。 
 みなさんは、どう感じるのか…ぜひこの丸いゲートをくぐって体感していただけたら、うれしいです。
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